【第136回】 かすを取る

合気道の稽古は、まずは体の「かすを取る」ことと、開祖は常々言われていた。「かす」とは骨と骨の間の関節のしこりであり、骨についている筋(すじ)の硬さだったり、筋肉の硬直だったり、また不必要な体脂肪、血管にこびり付く血栓などである。「かす」とは、肉体の働き、機能を妨げる「サビ」と言えよう。

こんな「かす」が溜まっていては、体は十分機能しないし、感覚は鈍り、頭も働かない。先ずは「かす」を少しでも無くすように稽古しなければ、先へ進めない。

手には、7つの関節がある。指の最先端指骨(末節骨)、第ニ番目の指骨(中節骨)、第二番目と第三番目の指骨(基節骨)、第三番目と第四番目の指骨(中手骨)、手首、肘、肩、胸鎖関節である。手を上手く遣うためには、ここの「かす」を取らなければならない。合気道の稽古では、通常、第二教手首返しで手首、三教で肘、二教と三教の収めの受けで、肩の「かす」が知らず知らずのうちに取れるようになっているが、手の残りの4つの指骨の関節の「かす」までは取られていないようである。

しかし、これらの関節の「かす」も、意識して稽古をすれば、取れるように合気道の技はできている。例えば、一教腕押さえで相手の腕をしっかり掴んで押さえれば、第一番目の指、第ニ番目の指、第三番目の指は鍛えられると同時に「かす」が取れて行く。胸鎖関節の「かす」も、肩を貫いて手を遣えば「かす」は取れてくる。

相対稽古で、それらの「かす」を取るのが難しいようなら、一人でその部位を折り曲げ、伸ばして鍛錬すればいい。各々の第一番目の指、第ニ番目の指、第三番目の指が直角になるのが理想である。また伸ばした場合、「かす」が取れた手は、曲らずまっすぐに美しく伸びていなければならない。

また、下肢(足・脚)にも「かす」は溜まっているので、取らなければならない。足の指、足首、膝、股関節などの「かす」である。ここに「かす」が溜まっていると、下肢が突っ張ってしまって、重心が落ちず、不安定になり、上手く動けない。これらの部位を折り曲げたり伸ばして、「かす」を取っていかなければならない。道場での相対稽古でも、座技や受身でも取れてはいくが、足りない時は、自主稽古で取っていけばよい。下肢、特に、股関節の「かす」を取るのによいのは、四股である。四股が上手く取れれば、下肢の「かす」は取れたといえるかもしれない。

この他の部位の「かす」は、合気道の技の稽古で大体は取れるはずである。首の「かす」は、顎を引いて受身を取っていればいいだろうし、腹の「かす」(メタボ)も受身を取っていれば取れるはずである。取れないとしたら、まだ受身が足りないのだから、自主稽古で最低でも30回(注:何回でもいいが、緊張し、真剣になる回数でなければならない。緊張が伴わない稽古では「かす」はとれない)受身を取ればいい。

内臓にある脂肪などの「かす」や血管の内部の「かす」も、稽古で汗をかけば取れていくはずである。

いずれにしても、「かす」をとるつもりで体をつかうよう、意識して稽古をしていくべきであろう。