【第1012回】 上腕を鍛えつかう

片手取り呼吸法を繰り返し稽古している。教わったいろいろな法則や術を取り込んでいくことによって精進するようにしている。お陰で大分格好がついてきた。格好がついてきたということは、己がイメージしていた技に近づいてきたという事である。
格好がついてくると体や技に欠けたものや不足するもの、また、他に比して脆弱なところがあることに気づくようになるようだ。

今回気づいた脆弱な箇所(部位)は上腕である。上腕の働きが弱いために、片手取り呼吸法でも十分な力が発揮されていないことに気がつたのである。風呂で上腕を見てみると、その下の腕と比べ細く、ひ弱そうである。腕や手掌は気が張って太く膨らんでいるが、上腕はそれと比べ貧弱である。考えてみれば、手掌や腕はこれまで大分鍛えてきたが、上腕は意識して鍛えてこなかたわけだから、このような結果になったということだろう。
上腕も鍛えつかうようにしなければならないということになる。

それでは上腕をどのように鍛えればいいかということになる。まだ短期間ではあるが試したみたこととやろうとしている事を記してみる。

  1. これまで手掌と腕を鍛えたように上腕を鍛える
    手首と肘は体(支点)とし手掌と腕は用としてつかうが、鍛え方は手首を支点(動かさない)として手掌だけを円く動かす。肘も同じように鍛えられる。上腕も肩を体(支点)として円く動かすのである。徒手で体操としてやればいい。過って有川定輝先生は手首をくるくる回しながら“これできるか”と笑いながら見せて下さっていたのを思い出す。徒手でできるようになると、剣や杖でも鍛える事ができる。上腕づかいが基本であるが、手首や肘での剣づかいは接近戦(相手が近い間合いの場合)などに有効であることがわかるだろう。
    手先(用)と手首(体)でつかうことは手先と手首がしっかり結ぶことになる。腕と肘も同様に結ぶことになるわけだから、上腕と肩もしっかり結ぶ事になる。要は上腕の働きをよくするためには肩の働きが重要になるわけである。
  2. 上腕も息の縦―横―縦の十字で鍛えつかう
    これも手先や腕と同じように、上腕を息を吐いて縦、息を引いて横の十字で鍛えつかう。横の十字で上腕を気で張り、膨らませるのである。
  3. 息を吐く際は肩から手先、息を引く際は手先から肩へ
    息を吐く際は、気を肩→上腕→肘→腕→手首→手先に流し、息を引く際は、手先→手首→腕→肘→上腕→肩の順に気を流す。
    この感覚は四股踏みで実感できるようだ。
  4. 一本の手となる
    上腕に気が満ちると、肩が張り、胸と背が張り拡がり一枚岩のように頑強な体幹になる。また、肩と手先がしっかり結ぶので手先から力が出るようになる。肩と手先が結ぶと他方の肩と手先にも気が流れ、両方の肩と手が結び一本の頑強な手となる。技はこの頑強な一本の手で掛けるようになる。
  5. 上腕によって技も力も変わる
    上腕が頑強になりつかえるようになると、動きが大きく、強力になる。上腕をつかわない小手先や腕の動きでは小さい。また肩、背、腰と連動せずにつかえないので大きな力は出ず、所謂、魄の力になってしまう。
  6. 上腕、腕、手先を一緒につかう
    上腕を鍛えつかうようにしたわけであるが、基本的には上腕も腕と手先と一緒につかわなければならない。はじめから一緒につかうとこれらの各々の働きや重要性が分からないので、別々に研究稽古をしたわけである。一緒につかえるためには別々にもつかえなければならないし、別々に鍛える必要があるわけである。