【第1013回】 仙骨で肩と腰をつかう

合気道の技は主に手で掛けるから手の働きが重要になる。手に大きな力が出るようにしなければならないし、手で相手を導くようにしなければならない。このためには自己の気によって、相手を凝結し、ひっつけなければならない。
このような手の働きをするためには、手先と腰腹がしっかり結び、腰腹から手先に気が流れるようにしなければならない。
しかしこれが分かっていても出来ないものである。その理由は、肩で気（力）が止まってしまうことである。腰腹の気が肩で止まってしまい、また手先からの気も肩で止まるのである。そうすると手は手先から肩までの力、所謂、腕力となるわけである。この肩からの腕力をつかうと必ず相手の力とぶつかってしまい、身動きが取れなくなるものである。片手取り呼吸法や諸手取呼吸法でやってみればそれがよくわかるだろう。
肩で止まってしまうのは力だけではなく、気も止まってしまうわけだから凝結力も引力も働らかなる事になる。

相対稽古の稽古仲間に、肩を貫かなければならないと言うのだが中々出来ないものである。肩を貫く方法を伝授するも難しいようである。自分がやってきた方法であるから間違いはないはずであるし、自分の肩は貫けているのである。これは以前から書いているように、肩を縦と横の十字によって肩を貫くのである。

しかし己の肩が貫けるのをよく観察するとある事に気づいたのである。それは肩を貫くのは“仙骨”であるという事である。仙骨が立つと肩が貫けるのである。
更に分かったことは、布斗麻邇御霊のは仙骨を立てることによって湧き上がる“気”であるということである。これまでが実感できなかったが、これで実感出来るようになった。

また、更に分かったことがある。
人の体は手と足が繋がり、連動しているように、肩と腰が連動しているということである。故に、肩を貫かなければならないということは、腰も貫かなければならないという事になる。腰も肩と同じく、突っ張っていては駄目だという事である。しかし、肩と同様、腰の突っ張りを外して自由に動かすのは容易ではない。正面打ち一教でも片手取り呼吸法でも経験しているはずである。

腰の突っ張りを無くし、自由にするものこそ“仙骨”なのである。つまり、仙骨が肩と腰の突っ張りを取り除き、気を流し、自由な働きにしてくれるのである。
これがよくよく分かるのが開脚運動である。足を開いて額や胸を床につける運動である。若い内は頭や胸を下に落とせば床につくだろうが、高齢になったり、体が硬くなるとそれが難しくなる。その問題を解決してくれるのが「仙骨を立てる」ことである。仙骨を立てることによって、肩と腰の突っ張りが取れ、気が体に満ち、流れるから額が床に着かないまでも近づくわけである。

肩と腰の突っ張りがなくなると手先に気が流れ、腰腹からの大きな力が出ると同時に、腰腹が手を動かし、接している相手を浮き上がらせるのである。合気道の醍醐味である。