【第939回】 宇宙の法則

合気道を長年修業している。年も傘寿を過ぎ、はなったれ小僧を卒業したようだ。これまで真面目に稽古をしてきたつもりだが、合気道だけに集中して他の事には無関心であったと思う。言うなれば合気馬鹿だったということになる。
しかし、最近は合気道を更に少しでも深く知り、身に着けようとする他に、他分野や武道としての合気道に直接関係ない事にも興味を持つようになった。お陰で新しい世界を知るようになり、生きている喜びが倍化した。合気道+αで更に毎日が楽しくなったのである。

合気道の修業の目標は宇宙との一体化であり、そのために宇宙の法則に則った技を身につける稽古をしなければならないと書いてきた。このようにこれまで書いた論文には「宇宙の法則」という言葉を頻繁に使ってきた。疑うこともなく、また自信を持ってこの「宇宙の法則」をつかうのは、合気道の創始者である植芝盛平大先生がつかっておられるからである。例えば、
「技は、すべて宇宙の法則に合していなければならないが、宇宙の法則に合していない技は、すべて身を滅ぼすのである。このような技は宇宙と結ぶことはできない。」(合気神髄 P86)である。
「宇宙の法則」で技と身体をつかうといい技が生まれるし、「宇宙の法則」違反をすればその技は効かないし、身体を痛め、つまり身を滅ぼす事を実感している。合気道には「宇宙の法則」があるということである。

最近、宇宙物理学者、須藤靖博士著『宇宙する頭脳』を読ませて貰った。ここで確認できたことは、宇宙には法則があるということである。当然といえば当然だろうが、これまでまだ確信できていなかったのである。宇宙の法則は合気道だけのものかと思っていたからである。
同著は次のように記している。

つまり、科学の世界でも宇宙の法則があるということが再確認されたわけであり、合気道での宇宙の法則も科学であるという事が確信できたわけである。大先生は、合気道は科学であるとよく言われていたが、正しく合気道は科学なのである。
合気道家は武道の世界だけに留まるのはもったいない。科学の世界や他の世界を知れば、その分野の新たな楽しみが増えるし、合気道を深めることもできるだろう。若い頃は思いも依らなかった事である。


参考文献 『宇宙する頭脳』(須藤靖博士著 朝日新書)