【第613回】  天の呼吸、地の呼吸 続き

今回は、前回の「天の呼吸、地の呼吸」の続きである。前回書いたものを、もう少し詳しく書いてみたいと思う。簡単に言えば、「天の呼吸、地の呼吸」をはっきりと自覚することと、腹の働きの重要性を再認識すること、更に、この天地の呼吸をつかわなければ、力に頼ることになり、技は効かないということを悟ることである。

前回も書いたが、「地の呼吸と天の呼吸とを頂いてこのイキによって(略)技を生み出してゆく」とあるように、まず、地と天は呼吸をしていることを自覚しなければならない。次に、己の呼吸をこの地の呼吸と天の呼吸に同化して技にしていかなければならないことを知らなければならない。

そこで、天と地の呼吸をし、その天と地の呼吸に己の息と同化するにはどうすればいいのかということになるが、この間研究して分かった一つの方法を紹介する。

  1. 腹に息を集め、腹を締める
  2. 次に締めた腹を緩めるが、腹の前面を支点として動かさず、腰側を緩め、息を入れていく。(十字の息の変化である)尚、この息づかいは、開脚などの柔軟運動の息づかいでもある。
  3. 腹と腰の間に息が入ると、腹から息(気)が自然に上がってくると同時に、腹から息(気)が自然に下りていく。この息は己のものとは違う息である。この感覚が、「天の呼吸と地の呼吸」であると思う。只、腹を締めたり緩めるだけではこの感覚はつかめない。
  4. この「天の呼吸と地の呼吸」に己の息(気)を同化させれば技になるわけである。
この「天の呼吸と地の呼吸」が最もわかりやすい技は二教裏であると考えるから、これで説明してみる。分かり易くするために、完全な技としてではなく、相手に頑張らせた、鍛錬法としての二教裏で説明する。
  1. 相手の手首(右とする)を、息を吐いて腹を締めて、右手で相手の手首を己の肩や胸につけ、しっかり抑える。
  2. 抑えている手を緩めないで、締めた腹を緩める(腹の前面を支点として動かさず、腰側を緩める)。
  3. 腹から天の息が上がってくるので、それに己の息(縦そして横)を合わせると相手の肘が上がってくる。同時に、腹から下に地の息が下りてくるので、それに己の息を合わせて、体重と共に地に落せばいい。下に落ちれば落ちるほど、他方の相手の肘が天の息と共に上がってくる。後は吐く息(潮干)と重心の移動(陰陽)で収めればいい。
因みに、二教裏は特に、この天の呼吸、地の呼吸でやらないと、腕力に頼ることになり、相手に頑張られてしまったり、争いになってしまう。
勿論、すべての合気の技は、この天の呼吸、地の呼吸でやらなければならないし、柔軟などの準備運動もこれでやらないと、体を壊すことになると考える。