【第703回】 足底の縦横十字

相対稽古で相手に技を掛ける際、相手にも納得してもらうためには次の大事な要因があると思う。
一つ目は、腕力や体力の魄の力ではなく、魂の力(念、精神、心)でやること
二つ目は、相手と一体化して、相手を自分の思うように動けず、反撃もできない態勢と気持ちにさせること。
三つ目は、技と体の軌跡とが切れず、乱れないこと。スキがないことである。

一つ目の魂の力で技をつかう事については、『合気道上達の秘訣 「第698回 土台をつくる」「第703回 合気道の鍛練方法』他で既に説明しているので、何故それが必要なのかや、どうすればいいのかは省略する。
二つ目の相手との一体化である。合気道の技をつかう際は、相手と接したところで相手と結び一体化し、相手を己の一部にしなければならないことは度々書いてきた。この初めの接触での結びが出来ないと、相手は自由気ままに頑張ったり、反撃してくるので、争うことになってしまうし、魄の稽古になってしまうから、最初の結びが重要になる。

片手取りや両手取りなどで相手がこちらの手を掴んでくるのを結んでしまうのも容易ではないが、それほど難しくはない。その気になって一生懸命に稽古をすれば出来るようになるはずである。
しかしながら、正面打ちなどで打ってくる相手の手(刀)に結ぶのは容易ではない。結ぶのも難しいが、更に難しいのは相手と接した手刀で相手と一体化することは難しいのである。

合気道の技を効かすためには、相手との接点に己の体重(体の重さ)が掛からなければならない。
相手が手先を掴んだ場合は、その手先で結び、そこに体重が掛かるのである。相手の手には体重が掛かっているわけだから、相手はその手を上げることもできないし、自由に動いたり反撃することができないのである。
これを相手が打ってくる手刀に対しても、結び、そして体重を懸けなければならないのである。

相手の手刀と結び、一体化するためには、入身で進み、己の手刀で相手の手を切り下ろして体重を掛けなければならない。入身で縦に動くが、そのために、爪先を上げて踵から進み、手刀で相手の手を上にすり上げ、爪先を落としながら手刀で相手に体重を懸け、相手をいつかせ、相手と一体化するのである。(写真下)

有川定輝先生の正面打ち一教
三つ目の技と体の軌跡が切れず乱れず、スキがないことであるが、この為には、足底の三点の踵、小指球、母指球を体重があおらなければならない。踵?小指球?母指球と体重を横に移動するのである。
この体重のあおりによって、切れ目のない、スキの無い技と体の動きになるのである。

正面打ちの場合は、入身による上下の縦の動きと足底のあおりの横の動きの十字になっていることになるが、片手取りの場合も、縦横の十字々に足底をつかわなければならないし、恐らく、すべての形(かた)でこの縦横十字の足底づかいをしなければならないと思う。