【第935回】 剛柔流の重い体

前回は『重い体』について書いた。そしてこの重い体を技や日常動作でつかっていくと更に新たな事が分かってきたので書いてみることにする。

まず、体が重くなってくると天と地との結びを感じるようになることである。これまでは無暗に体を動かしていたので天地との結びはなく、天も地も感じる事がなかったわけである。
天地と結ぶと天地の気と結び、そして呼吸を合わせるようになる。呼吸が合えば気持ちがいいのでそれが自覚できる。天地の水火のイキと己の息とがシンクロするわけである。

次に、重い体には三種類あるということである。所謂、一霊四魂三元八力の三元である。剛の体、柔の体、流の体である。これらの重い体は、丸い塊りであり、球であり、玉であり、その玉は靈であり魂であると自覚する。
剛の体は骨の玉。柔の体は筋肉、肉の玉、流の体は水・気の玉と感ずる。

技をつかう際には、はじめは剛の体から始めるのがいいだろう。魄力が養え骨格、関節が鍛えられるからである。どんな力も跳ね返してしまう体を養成し、そしてつかえるようにするのである。筋肉は緩んでしまったり、つぶされてしまう危険性もあるが、骨にはその心配はない。
また、剛の体の稽古は誰でもできるし、力いっぱいできるから一番問題なくできる稽古だと思う。

次は柔の体の稽古であるが、これは剛の体の稽古程容易ではない。相手と接する肉は柔らかいので骨のように力は即相手に伝わらないし、力が分散して逃げてしまうからであると考える。
しかし、柔の体には剛の体には無い、特徴がある。
それは相手をくっつけてしまう引力を出せる事である。そしてくっつけてしまった接点を動かさずに技を収められる事である。これは合気道の技の鉄則である「魄を下にする」を身につける上で最適な体づかいと考える。

最後は、流の体である。流には水と気がある。己の体が水の玉、気の玉になって技をつかうのである。重い体をはっきりと感じる事ができるのである。水や気が体中で水火陰陽に動き、体の重さが移動すると共にそれが技に伝わるのである。
因みに、この流に水と気があると書いているが、これには大先生の教えがあるので、それから解釈して見る。
大先生は『合気神髄』に、「昔は、兵法を畳の上で道により天地の息をもって相手との距離を水の位とし、それを彼我の体的霊的の距離をなかいおいて相対す。相手火をもってきたら、水をもって対す。相手を打ち込ませるよう誘ったときは、水が始終自分の肉身を囲んで水とともに動くのである。すなわち相手が打ってくれば、水とともに開くから打ち込まれない。」とある。
この教えから分かる事は、

剛柔流は□○△でも表わされる。「気剛柔流、気△○□を根本として気によって技を生んでいくのをいう。」の教えである。しかし□○△の□だけ、○だけ、△だけではいい技は生まれない。いい技を生むためにはこれらの□○△が一つになり、そしてその中の□、○、△でやることである。

己の体が重くなり、剛柔流の三元でつかえるようになると、自然と一体化するようである。自然の気を感じ、自然と交流するようになるのである。そして自然の素晴らしさや有難さを感じるようになる。
また、自然との一体化によって快感、快適を感じるから健康にもなるし安らぎにもなる。