合気道の技は手で掛けるが、手の力は思っているほど十分に出ない。稽古を真剣にやっていればそれが分かってくる。相手が力一杯掴んできたり、打って来ればそれは分かるし、誰でも経験するはずである。ここまでは誰でも経験するわけだが、問題はここからどうするかという事である。これは無理だと諦めるか、その力に負けないように鍛錬するかに分かれる。
健康法で合気道をやっている人は別に強くなることがそれほど重要ではないから諦めることになるだろう。しかし、少しでも上手くなろう、強くなろうと思う稽古人はその力に挑戦しなければならない。どのように挑戦するかはこれまでの論文に書いてきた通りである。
先ずは、己の手の脆弱さに気がつくわけだが、これが稽古の初めである。己の脆弱さや無力さ、下手さを認めることがスタートである。これをうやむやにしては先に進めない。
己の手の脆弱を知れば、その問題を解決しようと努力することになる。努力すれば必ず成果が出る。どの程度の成果かは努力次第と設定目標による。
そうすれば次に、己の手が強靭になることに驚くようになるのである。手が鉄棒のように頑強になるのである。人間の手がそのように変身するのに驚かされるわけである。
手の変身だけでなく、身体が変身していくのである。手掌は指先まで伸びきり頑強になる。肩が張り、胸が強靭に厚くなる。背中が鉄板のように張る。下腹が張り、腰がどっしりしてくる。身体が地に食い込むように重くなる。
合気道で技と体を練っていくと、己の身体の事が分かってくる。まず、自分の弱い個所と強い部分がわかるから、弱い個所を強い部分までへのレベルアップをするようになる。そして強い部分のレベルを更に上げようとし、弱い個所は更にレベルアップする事になる。
己の弱い個所や強い部分を知るのは、自分では中々気づかないものである。相対稽古で力いっぱい稽古をしていくと分かるはずである。いろいろな相手と稽古をすればいいだろう。
そうすると自分の身体が少しずつ見えてくるようになるはずである。
そして己の身体と対話するようになる。身体がここが弱いから鍛えろとか、ここはこのようにつかってくれとか、そのやりからは駄目だとかである。
気が産まれるようになり、気で技がつかえるようになれば、気が身体を流れるので、何処がおかしいかが分かるようになる。気が身体の部位を結び流れているからである。また、働きの悪い個所に気を流せば、そこには力の大王の気が働くので強靭になることになる。
脆弱な手も鉄棒のように強靭になった。