【第904回】 形に入れる

自分が合気道の技を上手くつかえるように、これまでいろいろやってきたが、その一つに得意技をつくることがある。得意技が身につけばその得意技はレベルが高いから他の技もそれに肩をならべようとレベルアップし、そして全体的なレベルアップになるからである。
入門してから数十年は四方投げを得意技にしようと稽古してきた。お蔭様で四方投げは得意技になった。技が効くようになったし、四方投げから多くの事を学んだ。
四方投げが一段落して、次に挑戦したのは呼吸法であった。主に、片手取り呼吸法である。有川先生の「合気道の技は呼吸法ができる程度にしかつかえない」の教えもあったことから呼吸法にした。この呼吸法を得意技にするために、つい最近まで稽古した。そして片手取り呼吸法から諸手取呼吸法、坐技呼吸法も得意技としてつかえるようになってきた。
そして最近挑戦したのが正面打ち一教である。これを何とか得意技にしたいと挑戦したのだが、正面打ち一教はこれまでになく苦労した。流石、この技は合気道の極意技であると改めて思うと共に、難しさと挑戦のしがいを感じた。
しかし、以前の論文に書いたように、やることをしっかりやれば技になり、得意技にもなるのである。今では苦手だった正面打ち一教は得意技になった。

そして今、得意技にしようと思っているのは「胸取り」「肩取り」である。相手が胸や肩に触れた瞬間に抑え込んでしまう技である。以前にも何度か試してみたが全然技にならず、これまで匙を投げた状態だったが、正面打ち一教が何とか形になったので、また「胸取り」「肩取り」に眼が向いたのである。正面打ち一教が急に上手く出来るようになったのはある事をやったことである。そのある事を「胸取り」「肩取り」でもやればいいのではないかと考えてやってみると上手くいったのである。

そのある事とは、「手と足が十字々々になるように手をつかう。つかう手は手と反対側にある足を十字々々につかうということである。」(合気道の体をつくる第901回『手と足の十字々々で』
つまり、手足・体を形に入れてつかえばいいということである。つまりこの形に入っていなければ技にならないということでもある。正面打ち一教でも「胸取り」「肩取り」でもこの形に入っていなければならないということは、法則にんるから他の技でも同じであるはずである。確かに、片手取り・諸手取呼吸法でもこの形に入ってやればより上手くいくようである。
よって、これから新しい技や難しい技に遭遇しても、この形に入れていけばいいことになる。
相撲ではこの形に入れるを「手順を踏む」と云っているようである。
合気道に形はないといわれているが形はあるのである。合気道には力が要らないと同じである。力は要らないが要るし、形はないがあるのである。