年をとってくると、当然のことだが体は硬くなる。腰も重くなるし、動く範囲も少なくなる。よほど意識してストレッチなどして体をやわらかくしなければ、どんどん硬くなる。
また、これまで無理して使ったり、間違った使い方をされた体は、悲鳴を上げはじめる。肩が上がらなくなったり、膝が痛んだりしてくる。若い頃は、少しぐらいの痛みは、特別のことをしなくとも自然と直ってしまうものだが、年をとってくると、そうはいかない。若いつもりで無理するとますますひどくなり再起不能になってしまったりする。
合気道の稽古でも、高齢者になったら、稽古を始める前と終わってから十分ストレッチをする必要がある。特に、体の表(背中側)の筋肉は十分に伸ばす必要がある。筋肉を伸ばすにあたって注意しなければならないのは、息の使い方である。息を吐くと体は硬くなるので、伸ばすときは息を吸わなければならない。これを逆の息使いでやれば、やればやるほど体は硬くなってしまうことになる。
年を取ってきて硬くなるのは、体だけではない。頭も硬くなる。世間では「頑固」になるという。頑固爺や頑固婆になるのは、脳が縮むなど生理的な原因もあるだろうが、個人の考え方や生活態度にもよるので、個人差もあるし、その人の心掛けにもよるだろう。
頭の硬い人は、どちらかといえば陰気であり、あまり笑ったりしないし、考え方がネガティブになるといえる。従って、頭をやわらかくするには、この逆になるようにすればよい。ニコニコし、おかしければ大きい声で笑い、ものごとをポジティブに見るようにすれば、よいということだ。例えば、100歳まで元気で生き、日本じゅうに元気を与えてくれた「金さん、銀さん」の姉妹のように生きられればいいのではないか。
笑うのも、自分の馬鹿さ加減を笑うことができれば、リラックスできる。自分が出来上がってしまうと、考え方まで固まってしまうようだ。自分を見て馬鹿なことをやるもんだとか、まだまだだなあと思うためには、何か自分の好きなことに打ち込むのがいい。高齢者になったら「道楽」をしたらいい。合気道などはいい「道楽」になる。
頭が硬いと、体も硬くなるようだ。合気道の稽古でも、技も動きも硬い人と一緒に稽古をすると、下の相手には怪我させてしまいやすいし、上の人とやる場合には自分が怪我をしやすい。高齢になってきたら、少しでも体と頭が硬くならないよう努力しなければならない。