【第526回】  天の浮橋に立った呼吸法

開祖は『合気神髄』で、「天の浮橋」を具体的に次のように説明されている。「左足を軽く天降りの第一歩として、左足を天、右足を地とつき、受けることになります。これが武産合気の「うぶす」の社(やしろ)の構えであります。天地の和合を素直に受けたたとえ、これが天の浮橋であります。」(P.69)

合気道の技をつかう際は、「天の浮橋」に立ったこの足づかいでやらなければならないことになる。正面打ちでも、片手取りでもこの足づかいでやらなければ「天の浮橋」に立てず、合気道にならないことになる。

実際に、これを片手取り呼吸法(右半身)でやってみると次のようになるし、技になる。

  1. 「左足を軽く天降りの第一歩として、左足を天」は、後の左足に天から降りてくるように重心を掛けて、次に、
  2. 「右足を地とつき、受けることになります」とあるから、右手を出しながら、前の右足に重心を移し、手を掴ませる。
その後開祖は、自己が御中主の神になって、国之常立神(女神)をつくるといわれる。
だからここで、自己が御中主の神になる。宇宙の中心にある神になるのである。だから、力が地だけに降りるのではなく、その抗力が天にも昇っていき、上下双方向に力が働くのである。天地を貫き通す御中主の神になるわけである。これは容易ではないが、息を天地の十字につかうという。ここで相手の手とくっつくことになって離れにくくなる。
更に、
  1. この御中主の神から、この「右足をもう一度、国之常立神になって踏む」。この右足は、「オノコロ島、自転公転の大中心である」(P.79)。右足をしっかり踏んで力を更に地に落とす。ここで相手と一体化することになる。
  2. 今度は、左足を踏むが、「三位の体にて軽く半歩出します」(同上)。この左足は、「千変万化、これによって体の変化を生じます」(同上)。
  3. 左足を撞木で半歩進めながら、掴ませている手を円の動きで返せば、相手はこちらの円の中に取り込まれることになり、相手を自由自在に導くことができるようになる。 最後に右足に重心を移動すると、相手は倒れることになる。
この呼吸法で、天の浮橋を勉強し、身につけ、そして他の技につかっていけばいいのではないかと考えている。いづれにしても、「天の浮橋」は口で教えることも耳で聞いてもできない。己の体で覚えていくしかない。