【第497回】  念の研磨

合気道修業の目標は宇宙との一体化、と教わっている。従って、宇宙との一体化ができるようになる修行手段・法は、合気道の極意、ということになる。

極意はひとつだけでなく、いくつかあるであろうが、開祖は「念の研磨」が宇宙との同化をさせてくれる、といわれている。だから、「念の研磨」が合気道の極意、ということになると考える。

このことは、『合気神髄』に「正しい念は宇宙と気を結ぶ」というテーマで104ページに書かれている。そこで、念の研磨がどのように宇宙と一体化へ導いてくれるのか、このページから解読してみたいと思う。

まず、開祖は「五体は宇宙の創造した凝体身魂」であり、五体は宇宙と一体となって活動している、といわれる。ということは、人と宇宙は本来、無意識のうちに結ばれているし、同化し、一体化している、ということになる。

次に、宇宙の意思である宇宙天国建設への生成化育に、万有万物は使命を与えられているから、人もまたそのお手伝いをする使命があることになる。

人の使命を果たすために、開祖はここで「自己の肝心な心を練り、念の活力を研ぎ澄まし、心身の統一をはかることに専念することが必要である」といわれている。つまり、己の心を練り、念を強化し、体と心を統一しなければならない、ということである。ちなみに、「念」とは「心の中の一定の対象に精神を集中させること」(大辞林)と解釈されている。

さらに、心身の統一が進むと、業(わざ)が生み出される基礎ができ、それに念を加えれば、業(わざ)はどんどん出てくるようになる、という。

ただし、業は宇宙の真理に合っていなければならない。だから、念も宇宙の真理に合った、正しいものでなければならない。我欲に結んだり、目前の勝敗などにとらわれる念の武道は邪道であり、進歩向上はないし、災難をもたらすことになる。

念は、また、念を五体に留めておいてはいけない。つまり、使わなければならない、実行しなければならないものである。しかも、その念は宇宙と正しく結ばれていなければならない。宇宙と結んではじめて、技をはじめ、いろいろなものが生成してくるのである。

宇宙と五体を結ぶ念を、気結びという。念の気結びで五体と宇宙が一体となり、宇宙の中心に立つことができるようになり、合気道の極意を得ることになるわけである。

最後に、この極意を得るには、念の研磨が大事であると、開祖は次のようにいわれている。「念の研磨は、自己の意識せぬうちに、宇宙と同化する」。


引用文献 『合気神髄』 (八幡書店)