【第334回】 武

合気道は武道であるといわれるが、武道の「武」を合気道では、つまり開祖は、どのようにお考えになっていたのかを研究したいと思う。

「武」は一般的に、戈(ほこ)を止めるということになっており、戦いや争いをさせない、止めることである、といわれる。

開祖も、「武」はその通りであるが、さらに「戈を止めるという意義は、全心身の中のすべての武気が食い入りとまっているということである。」といわれている。(『武産合気』第二十六回)

開祖が「武」については『武産合気』でいろいろご説明されているから、まずはそのご説明を拾ってみることにする。なお、一部は筆者の言葉でいい替えたものである。

○宇宙の気・オノコロ島の気・森羅万象万有の気・アウンの気を貫きて、各万有の使命の上に息吹することが天之村雲の剣の精神の神気の動きであり、これが日本で一番古いの起源で、そして合気道である。

○宇宙はこの広大なる世のはじめより、現世、さらにこの先も、の行いによって全てみそがれ、宇宙建国に向かって進んでゆくのである。

○「がなければ国は亡びる」ともいわれている。即ち、は愛を守る生命である。
一元の大神様の情動、一霊四魂三元八力の大宇宙のみ心み姿、自分の体の新陳代謝、四季の変遷もすべてであるのである。

○気の世界には気の武がついてまわっている。武で汚れたものを祓い淨める。
液体の世界には液体の世界の武があり、その武で障害を取り除く。例えば、人体の血液の血行で障害、汚濁を取り除く、新陳代謝の機能が武の働きということである。肉体の柔体の世界にも武があり、三元(気、流、柔、剛)の働きによって禊ぐ。固体の武がある。大地地球には、すべての武がくいいりくいこんで、くい止まっている。

○ものというものが主になると、気(宇宙エネルギー)が停滞し、動きようがなくなるから、スサノオノ神様がオロチを退治して神剣を取りだし、天照大御神に捧げたように、大掃除をして剣の御魂を取りだし、魂を表にだすのである。これが武の現れであり、合気道の根源であるといわれるのである。

これらの開祖のご説明では、一元の大神様、それに続く二元で、造化の三神からこの世にいたっている。これは、大神様の意志によって、宇宙建国に向かっているもので、その意志は過現未の時間と万有万物のすべてを貫いている。

しかし、その動きが時として滞ったり、動かなくなり、新陳代謝の働きが減退することがある。その時には大掃除をして、滞った新陳代謝を復活させ、再生させる必要がある。こうして宇宙の意志の妨げになるものを取り除いていくものが「武」である、と考える。

それ故、武はどこにでも、なににでも、無くてはならないことになる。また、武道である合気道は、大神様のお手伝いをすべく、その意志に反することを取り除き、自分自身、社会、国、環境など等が停滞して淀まないように、武をもって守らなければならないだろう。