【第239回】 宇宙と合気道

合気道とは、宇宙の営みや宇宙の条理を身につけ、宇宙と一体化する道であるといわれている。合気道の技は宇宙の法則に則ったものであり、その技を練磨することによって宇宙と一体化していくと教わっている。

合気道をはじめた頃は、宇宙の営みとか宇宙の条理どころか、宇宙そのものへの関心もあまりなかった。ましてや、合気道の稽古は宇宙との一体化を目指すものなどとはピンとこなくて、ぜんぜん理解できなかったものだ。

合気道の稽古を漫然とではあるが40年、50年と続けて来ると、合気道と宇宙に関係がある、というより、宇宙がわからなければ合気道の上達はないのではないだろうかと考えるようになってきた。

現代の科学は相当進歩していて、いろいろな事を解明できるようになってきたが、まだまだ解明できていないものがあるようだ。いや、解明できているものはほんの僅かで、わからないことが大部分であるらしいし、そう思う。その典型的なものとして、宇宙のこと、小宇宙である人の身体のこと、何もないところからどうしてモノが創造されたのか、人類はどこからきてどこへいくのか、何のために生まれ死んでいくのか等など、肝心なこともわかっていないのである。

合気道は宇宙を知り、小宇宙の人体を知る道であるとも言えるだろう。合気道は、技の練磨を通してそれを身につけていくのである。だから、稽古はそれが身につくように練磨していかなければならないことになるだろう。

そのためには、まず合気道は宇宙との一体化を目標として修練するものであるということを、信じなければならない。一体化するとは、共鳴するということでもある。合気道ではこれを「山彦」といい、宇宙との山彦を最終的の目標にしているようで、開祖はこれを山彦の道といっている。

合気道は技の練磨を通して、宇宙との共鳴への道を進むのであるが、そこにたどり着くためには、たどるべくいくつかの段階があるのだろう。接した相対稽古人の響きを感じることによる共鳴、接しなくとも感じる共鳴、自然の響きを感じる共鳴、そして大自然の響きを感じる共鳴である。まずは、稽古相手の響きを感じて、相手と共鳴することから始めなければならないだろう。

また、合気道の技は宇宙の営み、宇宙の条理に則ったものとしてできているわけだから、宇宙の法則をもっていなければならない。技に宇宙の法則を取り入れ、また技の練磨から宇宙の法則を見つけ、それをさらに練り固めていくのが合気道の練磨ということになろう。

例えば、宇宙、または大自然は、すべて陰陽で構成されている。陰陽表裏一体になっているわけで、合気道の技もこの要素と働きがなければならないことになる。また、宇宙に創造されたものは、縦と横の十字から生まれたといわれている。「古事記」のイザナギとイザナミも、魂魄の縦横十字から円になり螺旋となりモノを生んだというし、遺伝子のDNAは2本のヒモが螺旋状に絡み合っている。合気道でも、力を生む技は十字で遣い、円であり螺旋で遣わなければならないことになるだろう。

合気道は宇宙との一体化への道である。宇宙、つまり宇宙の営み、宇宙の条理を発見し、それを技に取り入れていく稽古をしていけば、その目標に近づけることができるだろう。

その道にのって技の練磨をしていくと、何かが引っぱってくれたり、アドバイスしてくれたり、助けてくれるように感じることが度々あるようになる。自分はなんでも一人でやってきた、自分はなんでもできる、などと思っていたが、どうも傲慢だったようだ。人は何かに支えられ、何かに生かされているのかも知れない。それが、宇宙なのかも知れない。