【第152回】 高御産霊の神と神産霊の神

宇宙生成に神習うのが合気道である。宇宙は十字の交流によって万物を生成化育しているという。

まず一元の神である天の御中主神があらわれ、そこから高御産霊(タカミムスビ)の神と神産霊(カミムスビ)の神があらわれる。これが造化の三神といわれ、十字の縦の│である。そして十字の横の一は伊佐那岐・伊佐那美としてあらわれる。この縦の│は魂であり、横の一は魄であるという。この十字の縦横、つまり魂魄が正しく整った姿が天之浮橋であり、十字の姿といわれる。

そして、「十字の交流によって生みだされる言霊の響きによって宇宙万物が生成されたのであり、それに習うことが合気の道なのである。」という。

ものは最初、十字の縦の│は造化の三神の働きによって生み出されるという。合気道でも、まずこの十字の縦のタカミムスビの神、カミムスビの神を働かせなければならないだろう。タカムスビ、カミムスビの神に働いてもらうには、自分の体と心とを天と地に結ばなければならない。体の中心軸が仙骨、背骨、頭頂を通り、天に届き、地に食い込むようにし、そこにまず意識を通すのである。縦の│では魂(意識)が優先するのである。自分の体に意識の縦の芯を通すのである。

縦の芯がしっかりすると、魄の横の一が働きやすくなるものである。手足が自由に遣えるようになるのである。これで十字が整い、天之浮橋に立てることになる。縦の│に意識を通さずに手足を先に遣ってしまうと、中心がない動きとなり、また手先の末端だけの力しか遣えず、十分な働きができなくなる。四股を踏んだときふらつくのは、縦の│に気持ちと体重が載らないのに、横に足を上げようとするからである。合気道の技を掛けるときも、横の手足を遣う前に、まず縦の│をしっかり保持しなければならないことになる。

十字が整うと心も動きもまるくなり、そして螺旋で動けるようになる。縦の│がしっかりしていなければ横の一が正しく働くことができず、螺旋で動くこともできない。手足をむやみにバタバタすることになる。心は丸くならず、体三面にもひらけない。初心者は横の一だけに注意を払うので、技が上手くいかないとも言えるだろう。

合気道の稽古では、先ず縦の│をしっかりつくり、そして横の一をつくり、十字を整えて、「心を丸く体三面に進んでいかなければならない。」のである。

まず縦の│である魂を働かせ、魂によって横の魄を働かす。現代は魂が魄に隠れてしまい、魄が巾をきかせているの、争いが起こる。まずは、縦軸の魂をしっかり保持し、魂が魄の上に来るようにしなければならないだろう。