【第104回】 宇宙法則と「わざ」

合気道は技の形を通して、体の節々のカスをとり、ときほぐしていく「禊ぎ」である。禊いだ体になれば、宇宙の響きを感じ、宇宙とのむすびができるようになり、宇宙の法則に則った「わざ」(技、業)ができるようになるということである。

多少体力や腕力があったとしても、宇宙の法則に反したことをやれば、修行に行き詰まったり、体を痛めることになる。若くて元気があるうちは、宇宙の法則など気にしないで、がむしゃらに稽古をし、体と精神を鍛えるのがよいが、歳をとって高段者になってくれば、理合の稽古をしなければならない。若いうちは稽古をひたすらやればよいが、高段者はただ漠然と稽古を続けても上達はない。

合気道の"技の形"をやる場合、うまく捌くためにはそのための法則がある。その法則にしたがってやらないと「わざ」は効かないだろう。例えば、諸手取り呼吸法や片手取り四方投げで、持たれている手をはじめに動かしたら、相手に力を入れられたときに動けなくなってしまう。合気道で「わざ」をかけるときは、相手と接しているところを動かさず、その対極を中心として動かさなければならないという法則がある。従って、この場合は持たれた手を使うのではなく、その対極にある腹や腰を中心として使うのである。

これは太陽と地球、地球と月等との関係である。腹は太陽にあたり、手は地球にあたる。太陽は中心にあって、定位置でエネルギーを放出して、地球を動かしている。太陽はただじっとして何もしていないようだが、地球を含む8個の惑星を動かしている(公転)。もし太陽が本当に何もしていなければ、8つの惑星はそれぞれバラバラに運動することになり、8個の惑星は規則正しい軌道を規則正しく動けないはずである。太陽が地球を回しているといえよう。

地球は太陽に動かされ、太陽はもっと力のあるものに動かされ、その力持ちも更に力のあるものに動かされ、最終的には、開祖がいわれる大宇宙を創ったもとである一元の本"ポチ"につながり、その一元の本が宇宙すべてを動かし、統制していることになるのだろう。そこがすべての中心になり、宇宙のすべてを動かしているはずである。

また公転する地球は一日1回転の自転もしている。従って、前述の諸手取り呼吸法で持たれた手(地球)は、腹(太陽)を中心に公転すると同時に自転しなければならないということになる。実際に持たれた手が自転(回転)しないと、相手の力とぶつかってしまい、相手の力を吸収することができず、「わざ」は効かない。

太陽と地球、地球と月には、万有引力が途切れることなく働いている。手と腹も、途切れのない引力で結ばれていなければならない。手が腹に結んでいなければ、よい仕事はできない。従って、手だけを独立して使うのは、宇宙の法則に反しているので、正しくないということになる。

宇宙の世界だけでなく、原子の世界にも宇宙の法則は働いている。原子核と電子の関係は、太陽と惑星の関係と同じといえるだろう。宇宙の法則はミクロの世界にまで及んでいる。ましてや人間の世界に及ばない訳はないだろう。

宇宙と人体はつながっており、この両者は同じような働きをするといわれる。開祖は、「宇宙と人体とは同じものである。これを知らねば合気はわからない。何故ならば合気は宇宙のすべての動きより出てきているからであります。」と言われている。(「武産合気合気」)

宇宙の法則を研究し、人体と「わざ」に取り入れていかなければ理合の合気にならない。理合とは、宇宙の法則に合っているということであろう。


参考資料:「植芝盛平先生口述 武産合気」(高橋 英雄編)