【第3回】 自然への挑戦

人は無意識のうちに、自然に反抗しようという行動をする。そして、後で悔いるということを繰り返す。
合気道の稽古をしていても、やはり相手とぶつかったり、力で押しつぶしたりする不自然、かつ反自然な動作をしてしまいがちである。
その反面、人は自然に憧れているし、自然にやろうとは思ってはいる。

技を上手にやるというのは、実は自然にやることであり、つまりは無理、無駄がなく、受ける方も自然に、気持ちよく受けがとれることである。

人は自然と闘いながら今日の文明を築き上げてきた。もし人類が誕生して以来、動物のように自然と共生してきていたら、人類も自然も今とは全然違ったものになっていたであろう。

人は森林を切り開き、猛獣と戦い、湿原、海を埋め立て、川や沼を堰きとめ、鉱物、石炭、石油、天然ガスを掘り出し、大量消費し、廃棄ガス、排水やごみを大量に排出してきた。その結果、地球の温暖化現象でこれまでになかった規模で台風やハリケーン、水温上昇などの異常気象現象が起こっている。

自然を壊すことは災害や飲料水、食料品などの汚染につながり、避けなければならないと誰でも思ってはいるだろうが、自分が実際行動を起こすと自然を害することになってしまうのである。

しかし、人は誰でも自然に憧れるし、自然をできるだけ破壊しないで、大切にしたいと考えている。このまま自然を破壊し続ければ、間違いなく地球の反撃があり、住みにくい地球になってしまうことも知っている。

これまで豊かになるためにやってきたことは人類にとって必要であり、必然的であったのだろう。しかし、今や人類は十分に物質文明を享受している。勿論、地球のある部分では十分ではないところもあるが、それは人類同士で解決できる問題である。また、近年の歴史を見ても、争いの原因の大きな要因はモノが余り過ぎていることである。

これからは、これまで培った物質文明と物質科学を土台にしながら、それを管理し、導く精神、魂を培っていくべきである。稽古においても、まず武道のしっかりした体を作り、そしてその体を導く精神と魂を磨くことが大切である。