【第946回】 胸で手をつかう

前回の「第945回 胸を鍛え、胸をつかう」では、腹を鍛えたら、次は胸を鍛え、胸をつかうようにしなければならないと書いた。
今回はこれを基に、胸をどのようにつかうかを書いてみたいと思う。
これまでは胸をつかうことによって、体や技が切れ目なく動き、とこれまでのよりも強力な力が出、腹中からの陰の力に対し胸中からの陽の力、つまり陽の気が生まれる。よって、相手とぶつからず、一体化するようになると書いた。そして胸をつかうことによって、片手取り呼吸法や交差取り二教が効く事を紹介した。

今回はこの胸のつかい方をより具体的に、胸で手をつかうとする。これまで腹で手をつかうようにしたいたわけだが、腹を胸にするのである。といっても腹をつかわなくともいいわけではない。腹は鍛えられ、腹中の気が十分に働いてくれなければならない。そしてその上で胸が働くということなのである。腹は十分に鍛えなければならないし、そうでなければ胸も働く事ができないのである。
胸で手をつかわれていると感得する写真を示す。有川定輝先生のものである。腹もつかってはおられるが胸がつかわれていることが明白である。

それでは何故、胸で手をつかわなければならないかということである。それは以前に研究した“息陰陽”である。息陰陽で鉄棒のような手・腕をつくるわけだが、腹だけの息陰陽では十分強靭な手・腕ができないのである。以前は腹の気で手を息陰陽でつかえば十分強靱で鉄棒のような手だと思っていたが、胸で手をつかうことを知り、やってみると腹での息陰陽の不完全さがわかったのである。

息陰陽の手は、息を引き乍ら(陰)手先、指先、腕、上腕を横に拡げる(膨らます)と手は鉄棒のような強靭な手となり自然と上がり下がりする。息を吐きながら(陽)で手を上げ下げする。息の陰陽づかいである。
この息陰陽を腹中の気から胸中の気でやるのである。胸をつかう方が腹よりも息陰陽が働きやすいことを実感するのである。つまりより強靭な手ができるのである。強靱の手は上記の有川先生の手を見ればわかるだろう。このような強靭な手でなければ技はつかえないということである。
強靱な手をつくり働いてもらうためにも、息陰陽に働いてもらうためにも胸をつかわなければならないということになるわけである。