【第934回】 稽古は水火の仕組みで練る

自主稽古では呼吸法をやるようにしている。主に片手取り呼吸法である。もう相当な年月と回数やっていることになる。初めのうちは相手を倒せるよう、相手の力に負けないようにとやっていたが、今はこの呼吸法がいろいろな事を教えてくれていたことが分かったし、合気道の技の深さや面白さを教えてくれていたことに気づいたのである。
呼吸法に集中して稽古を繰り返す理由であるが、以前から書いているように有川先生の教えである。先生は合気道の技は呼吸法がつかえる程度にしかつかえないといわれていたのである。初めはその教えをあまり重視していなかったが、今になると先生のその教えの正しさが実感できるのである。呼吸法を見ればその人の技のレベルが大体わかるのである。
また、自分自身を振り返ってみると、やはり呼吸法のレベルで技もつかっているし、呼吸法のレベルアップがあると技もレベルアップしていたのである。

最新の呼吸法の稽古は相手に力一杯掴ませた稽古である。片手取り呼吸法が主であるが、坐技呼吸法や諸手取呼吸法でも挑戦している。片手取り呼吸法ではほぼ問題はなくなったし、諸手取呼吸法も何とか相手が倒れてくれるようになってきた。レベルアップしたということである。新たな法則が身についたということである。
その法則は、勿論、大先生の教えである。「稽古は水火の仕組みで練る」「伊邪那岐、伊邪那美に神習う」という教えである。
水火の仕組みとは布斗麻邇御魂の形であり、その中の伊邪那岐、伊邪那美に神習って技をつかえということだと考える。
つまり、伊邪那岐 伊邪那美の水火で体と技をつかうということである。息を口で吐きながら腹中の気を横(━)に拡げ、そして縦(|)に落とすのである。これでができることになる。
これまではこれで体と技をつかっていたが満足出来るものではなく、何かが欠けていると感じていた。
そしてこれに水火が加わったのである。二つの水火があるようだ。
一つは、伊邪那岐、伊邪那美の○の中の━は膨らみ、|は縮むの水火である。
二つ目は、吐く息と引く息による水火である。つまり吐く息の水から引く息の火の水火である。水火とはイキである。
一つ目の水火は神生みの水火、二つ目の水火は島生みの水火であろう。このナギナミ二尊の神生み島生みを学ばなければならないと大先生は次のように教えておられる。
「合気はこのナギナミ二尊の鳥生み神生みに基礎根源をおいているのであり、これを始めとしているのである。合気に志す方々は、この神生み鳥生みをよく学んで頂きたい。」(武産合気P83)

稽古は水火の仕組みで練らなければならないのである。実際、水火が上手くつかえれば技がうまくいくようである。諸手取呼吸法も上手くいくようなので、次は二人掛けの諸手取呼吸法に挑戦してみることにする。恐らく失敗するだろうが、また新たな教えが得られるはずである。先は長い。