【第931回】 言霊の妙用とウの言霊

大先生は、合気とは言霊の妙用であり、言霊の妙用が合気道であると教えておられる。つまり合気道の技は言霊をつかえ、言霊をつかわなければ合気道の技にならないぞという教えである。
妙用とは、不思議な作用、非常にすぐれた働きという意味であるが、それでは言霊とは何かというと難しい。妙用は辞書で調べ、頭で考えれば分かるが、言霊はそうはいかない。
それを大先生は次のように表現している。「霊も物質も言霊であるし、宇宙の実態も言霊であります。しかしこれは普通の宗教者にはわからないのであります。これを生かす言霊の妙用が合気道であります」(武産合気P.42)
言霊は机に向かって勉強してもわからないぞ、合気道をやっていくうちに言霊がわかり、言霊をつかうようになるということであろう。

合気道を長くやってきたお蔭でようやく言霊、そのすぐれた働きが多少わかってきた。これまでは言霊に関心がなかったし、言霊の力を借りなくても技がつかえると思っていたわけである。しかしそれでは力にも技にも限界が出てきて、更なる何かの助けが必要になってきたのである。
その大なる助けになる一つが言霊だったのである。

言霊でこれまで分かった事は、

  1. 「言霊とは声とは違う。言霊とは腹中に赤い血のたぎる姿をいう。」
    声を出すだけでは言霊ではないということである。
  2. 天地のあらゆる音声は七十五声に収まり、七十五声はアオウエイの五声に収まり、五声はスの一声に収まる。故に、アオウエイの五声とスの一声は特に重要になるわけだからこのス、アオウエイの言霊から始めればいいと考える。
  3. 「この五十音、七十五音の音のひびきのなかに技は生まれてくる」(合気神髄P.45)。しかし声、言葉からだけでは言霊にならない。言葉は魄、言霊はひびきであるからである。つまり、声(言葉)をひびきで言霊にしなければならないということである。
  4. 声を言霊にするには、天地の呼吸に合し、声と心と拍子が一致して言霊にするのである。これを大先生は「天地の呼吸に合し、声と心と拍子が一致して言霊となり、一つの技となって飛び出す」と言われている。 等
これまで最初に意識してつかっていた言霊はイクムスビであった。イ声で手先を伸ばし、ク声で手を拡げ、ム声で手先を伸ばした。
次の言霊は、合気道の技をアオウエイ声で布斗麻邇御霊の形でつかった。アオウエイ声と布斗麻邇御霊が一体化して大きな力が生まれて来た。
最近の言霊は“う”の言霊である。この“う”の言霊は素晴らしい働きをしてくれるものであり、“う”の言霊なしでは技にならない事、そして言霊の重要性、必要性が実感できるようになったのである。

“う”の言霊である。ウ声はス声からうまれる。そしてウ声が言霊になっていくわけだが、それを次のように実感する。正面打ち一教などのように打ち下ろしてくる手や片手取り呼吸法などのように相手が掴んでくる手を想定すればいいだろう。 このウの言霊をつかえば技は大きくかわる。ウの言霊は誰でもつかえるようになるはずである。何故なら、大先生はこれを次のように教えておられるからであり、また、合気道は科学であるからである。
「ス声が生長して、スーとウ声に変わってウ声が生まれる。絶え間ないスの働きによってウの言霊が生じるのである。ウ声は霊魂のもと物質のもとであります。霊魂が二つに分かれて働きかける。御霊は両方をそなえている。一つは上に巡ってア声が生まれ、下に大地に降ってオの言霊が生まれるのである。上にア、下にオ声と対照で気を結び、そこに引力が発生するのである。」

ウの言霊で言霊を知り、言霊で合気の技をつかうようにしていけばいいだろう。