【第925回】 息陰陽

この一年間(2023年)は、呼吸法と正面打ち一教を中心に研究してきた。お陰で呼吸法(片手取り呼吸法、諸手取呼吸法、坐技呼吸法)は大分上達した。正面打ち一教も上達した事は確かだが、まだ不十分だし満足できるものではない。
正面打ち一教で最大の問題箇所は相手が力一杯打ってくる手を捌く己の手の非力さである。この問題を解決すべく、手を鍛え、手の各部位(手首、肘、肩)のカスをとり、手をイクムスビの息でつかうようにしたり、また、布斗麻邇御霊でつかうようにしたがどうしても十分な力が出ないのである。

そこでいろいろなやり方(息づかいや体づかい等)を試していると、手がこれまでの名刀とか鉄棒以上の、大先生が云われる大金剛力の手ができたのである。どうしたかと云うと、天と地を結んだ手を、腹、体中を息で膨らませながら出すのである。出るのは気でその気が手を動かしているのである。その手が前に出ると手先から気が手掌、腕、上腕、肩、胸、腹に集まり、腹と体が気で満たされる。そうすると今度は腹中の気が手先に流れ、体も手も大金剛力になるのである。
これまで手はただ前に出したり上げたりしていたわけだが、腹で引きながら出すのである。引くと出すの陰陽になるので強力になるわけである。これを息でやるのである。

いつもの通り後で分かるのだが、これは大先生の教えなのである。大先生は、息で陰陽をこしらえ、陰陽と陰陽とを組んで技を生み出していかなければならないと次のように教えておられるのである。
「合気道は、地の呼吸と天の呼吸を頂いてこのイキによって、つまり陰陽をこしらえ、陰陽と陰陽とを組んで技を生み出してゆく。天の気は陰陽にして万有を生み出す。」
下記にその大先生の息陰陽での技の例を示す。
しかし、この息陰陽をこしらえ、つかうのはそう簡単ではないだろう。これがつかえるために必要な事を身に着けておかねばならない事の他に、次のような事に注意しなければならないからである。
息陰陽とあるように、陰(引く)が先であり、陰の後に陽が働くのである。
天地の息と結ぶことである。そして天地の息→陰→陽となるのである。天地の息と結ばずに手をつかっても陰陽に手をつかうのは難しいものである。
陰陽に働く箇所は手首、肘、肩、胸鎖関節で変える事できる。この部位で陰に息を引き、陽に気を出すのである。これでこの部位(手掌、腕、上腕)を鍛える事も出来る。
手掌は手鏡にして顔の前に出す。手掌は腹と顔を結んだ中心線上を上がる。そうしないと力は分散してしまう。
息陰陽で手をつかうと“う”→“え”に自然となる。因みに、呼吸法などでわかるように、“う”から“え”に返る際、どうしても息と動作が切れてしまうのが問題である。

足も同様、息陰陽でつかえばいいはずである。また、大先生は「一挙一動ことごとく水火の仕組みである。いまや全大宇宙は水火の凝結せるものである。みな水火の動きで生成化々大金剛力をいただいて水火の仕組みとなっている。水火結んで息陰陽に結ぶ。みな生成化育の道である。」また、「合気はまず十字に結んで天ていから地てい息陰陽水火の結びで、己れの息を合わせて結んで、魄と魂の岩戸開きをしなければならない。」等と教えておられるので、この息陰陽から息陰陽水火になるようにしなければならないと考えている。

息陰陽は今年(2023年)最後に発見した宝であり、息陰陽水火が来年の最初の挑戦事となるだろう。