【第830回】 足の親指も手の親指のようにつかう

「第822回 足の親指をつかう」で、技を掛ける際に足の親指は重要であり、また十字に返しながらつかわなければならないと書いた。
そこで足の親指を意識して技と体を練って稽古をしてきたわけであるが、足の親指について新たにわかったことがあるので書いて置くことにする。

まず、足の親指を上手につかえばいい技が生まれるし、上手くつかわなければいい技は生まれないことを実感できる。従って、これからも足の親指は鍛えていかなければならないと思った。
次に、足の親指をつかうということをもう少し正確にいえば、足の母指球をつかうということである。これは手の親指と同じである。手の親指をつかう場合、手の母指球に気を満たし、そして親指先に気を流すように、足の母指球に気を満たし、親指先に気を流すということである。

手の親指は体・支点としてやたらに動かしてはいけないと言っているように、足の親指もやたらと動かしてはいけない。手の親指の場合は、親指をやたらに動かすと腰腹からの力が逃げてしまい、強力な力が出なくなるし、相手との結びが切れてしまう。諸手取呼吸法や正面打一教でそれはよく分かるはずである。手の親指を支点・体として、その対照にある小指側の小手や小指を用としてつかわなければならないのである。これは実際に技でつかってみればいいが、理合いでも説明できる。それは、合気道では手は剣としてつかわなければならないからである。手の親指が体として働かなければ、剣(腕)の刃筋がぶれてしまい、刃筋が通らないからである。

足の親指も手の親指同様、親のようにバタバタしないでどっしりと構えていなければならない。足の親指がどっしりしていると、一軸になった体重を受け止めることができるし、そしてその体重を縦から横へ十字に返すことが出来る。つまり、体を捻らずに面で返すことができるわけである。もし、足の親指がしっかりしていなければ、体を捩じったり、体の各部位をばらばらにつかうことになる。手の親指同様、諸手取呼吸法や正面打ち一教はこの足の親指の働きが必須ということになるようだ。

手の親指と足の親指は共に体・支点として働くわけだが、手の親指と足の親指を結び、連携して働いてもらうといいようだ。特に、諸手取呼吸法ではその効果がよく分かる。