【第774回】 これまで不解だった難問が氷解

布斗麻邇御霊に出会い、布斗麻邇の御霊で技を現わそうとするようになると、これまで分からなかった大先生の教えが分かってくるようになった。逆に言えば、布斗麻邇の御霊に出会わなければ、また、知らなければ大先生の教えはよく分からないし、『合気神髄』も『武産合気』も理解出来ないと思う。

これまで大先生のお話をお聞きしたり、『合気神髄』も『武産合気』を読ませて頂いたりしていたが、どうしてもその意味する事が分からなかったり、ぞれが何故それほど重要なのかなどが分からないでいた。しかし無意識の内に、その難問を解きたいと思っていたようで、布斗麻邇御霊との出会いによって、多くのこれまで不解だった難問が氷解していった。

どのような不解な問題がこれまであったかというと、次のようなものである。

古事記とフトマニ古事記
大先生は、古事記を勉強しなければならないと言われておられたし、布斗麻邇の御霊を技に現わさなければならないと、「合気は天の浮橋に立たされて、布斗麻邇の御霊、この姿を現すのであります。これをことごとく技に現わさなければならないのです」書かれている。
初心者の頃は勿論、つい最近まで古事記と布斗麻邇御霊のフトマニ古事記の重要性は分からなかったし、関心もなかった。そしてやっと、フトマニ古事記が合気道にとっては不可欠であるほど大事である事がわかった。

天之御中主神になる
「合気道は、自分が天之浮橋に立つ折は、天之御中主神になることである。」と、技をつかう際は天之御中主神にならなければならないと言われていたがどういうことなのか、どのような効果があるのかなど分からなかった。
しかい、で天之御中主神となって立つと、天と地との結び、自分と宇宙と結び、宇宙の精妙を吸収するようになる。また、天地宇宙と結んでしっかりした中心ができると、次の技の動きが上手くいく。天之御中主神と始まらないし、次に続かないのである。

天の呼吸との交流なくして地動かず
まず、天の呼吸、地の呼吸がよく分からなかったが、「息を出す折には丸く息をはき、ひく折には四角になる」。また、「丸くはくことは丁度水の形をし、四角は火の形を示す」と、引く息の火には大きなエネルギーがあり、吐く息は水で火を収めることは技に取り入れていた。しかし、「天の呼吸との交流なくして地動かず」「天の呼吸により地も呼吸するのであります」の、何故、初めに天の丸い呼吸でなければならないのかは分からなかった。
そして布斗麻邇御霊によって、その問題も氷解した。布斗麻邇御霊には7つの図像があるが、初めの5つが○の天の吐く息であり、その後2つの□の地の引く息になるのである。技も、初めに○の天の息で始めないと魄の技になってしまい、技が上手く収まらないのである。

天の浮橋に立たねばならない
「天の浮橋に立たねば武は生まれません。」と大先生は言われていたし、『合気神髄』と『武産合気』にも頻繁にそれが出てくる。天の浮橋に立った姿は十字であると言われるので、十字をつくればいいことになる。しかしどのように十字をつくればいいのかが分からなかった。
そして布斗麻邇御霊から をつくればいいことが分かったわけである。
これを大先生は、「合気は天の浮橋に立たされて、布斗麻邇(ふとまに)の御霊、この姿を現すのであります。これをことごとく技にあらわさなければならないのであります」と謂われているのである。

天の呼吸は日月の息、地の呼吸は潮の干満で、満干
「天の呼吸は日月の息であり、天の息と地の息と合わして武技を生むのです。地の呼吸は潮の干満で、満干は天地の呼吸の交流によって息をするのであります。」と合気の教えにはあるが、天の呼吸に日と月の二つの呼吸、地の呼吸に潮の干と満の二つの呼吸があるというのが分からなかったが、布斗麻邇御霊のでそれが分かった。
天の呼吸は○で吐く息である。そして丸く天の息を吐きながら、━と|の十字に息をつかう。息を吐きながら、更に吐いて引き、吐くのである。この息づかいがである。また、四角く地の息を引き乍ら、━と|の十字に息をつかう。この息づかいがである。慣れてくれば、息の代わりに気でできるようになるようである。

引力の練磨
大先生からは、合気道は引力の錬磨であるとお聞きしている。また、両書にも「真の武とは、相手の全貌を吸収してしまう引力の練磨」「宇宙と結ばれる武を武産の武という。武産(たけむす)とは引力の練磨であります」などとも書かれている。
技をつかっている内に、己の手が相手の手等にくっついてくるようになるので、これが引力だろうとは思っていたが、この引力の正体やどのようにして出てくるのかが分からなかった。
布斗麻邇御霊のの大八島の御霊である。出る息のを引く息のに収める姿である。これによって八つの島が生じることになり、これが合気道で云う八力である。八力とは、動―静、解―疑、強―弱、合―分であり、各々対照力、つまり引力が生じることになるわけである。
大先生は、「この三元八力の引力によって、大地を全部固めしめて、一つの大きな全大宇宙という活動機関が出来上がった。」と謂われているように、八力の引力によって大地が固まり、宇宙の活動期間が出来上がり、万有万物の基礎が出来上がったわけである。
己をつくり、技を生み出すには引力の養成が必なのである。

思い出そうとすれば、まだまだあると思うが、これでこの論文の意味はわかるだろうからここまでとする。只、分からない事は、いつかは分かろうとする事、そしてそれを解決したり、教えてくれるだろうモノを探し続けることが大切であるという事である。