【第757回】 関節が各々独立して働くように

合気道上達の秘訣の「第756回 手を合気道の手としてつかう」で、正面打ち一教や諸手取呼吸法等をつかうために、しっかりした手にするためには手の形を次の様にしなければならないと書いた。
「まず、手を刀と思い、手を前に伸ばす。伸ばしたら、手の平を手首を支点として内側に返す。約45度返ってそれ以上は返らずにそこで止まるはずである。これで手先から肘まで鉄棒のようにしっかりする。
次に手の平が45度返ったところから、手の平が地と水平になるまで更に約45度返す。これで手先から胸鎖関節までに気と力が満ち、しっかりした一本の手が出来る。限界まで返すことによって最大の力が出るのである。
有川定輝先生は、「手の平の返しの角度はこの45度と90度の二カ所しかなく、その間はない」と云われておられたのはこの事に関係あるのだろう。

正面打ち一教でも諸手取呼吸法でも、手はこのような形にならなければ力が出ないので、中々上手くいかないのである。
やってみれば分かるが、手の平を45度や90度に返すのは容易でないはずである。それは手首、肘にカスが溜まっていて、その角度に返らないのである。因みに、手の平が45度に返らないと手は折れ曲がってしまい、90度返らないと手が手先から胸鎖関節までの一本の手にならない。
従って、手の平を45度、90度に返すためには手首、肘、肩、胸鎖関節のカスを除去しなければならないことになる。そのために次のような稽古をすればいいと考える。

  1. 先ずは単独での準備運動で、各々の箇所のカスを取る。手首、肘、肩、胸鎖関節を独立した支点とし、その先を一本にして円を描くように返す・回すのである。時計回り、反時計回りとくり返すのである。
  2. 次に、これは以前に紹介した、素手での米字切りである。最もやり易いのは、肩を支点としての素振りであろう。
    正面の切り下ろし→正面の切り上げ→左上から右下への切り下ろし→右下から左上への切り上げ→右上から左下への切り下げ→左下から右上への切り上げ→右から左への胴切り→左から右への胴切り→正面への突き。
  3. これが、慣れてきたら、今度は2の動きを、手首を支点として、肘を支点として、胸鎖関節を支点としてもやればいい。
  4. 更に、3を両手同時にやる。有川先生はこれを偶に見せて下さったが、無駄なく美しく見事だった。有川先生の技のきれや凄さは関節の独立した働きにもあったということにもなるだろう。
  5. もう一つ、稽古の前にやるような関節の柔軟運動を息に合わせ、力一杯やることである。イクムスビの吐いて、吸って、吐くに合わせて当該の関節部に息・気を力一杯入れたり引いてやるといい。
これがある程度できるようになれば、手首、肘、肩、胸鎖関節は各々独立して働いてくれるようになるだろう。
そうしたら、今度は正面打ち一教や諸手取呼吸法で、手の平の角度が45度、90度になるように意識してやればいい。そこで、何故、手の平の角度が45度、90度なのかがわかることになるはずである。私自身がそうだったように。