【第662回】 足底と踵

合気道の技は手で掛けるわけだが、足を上手くつかわないと手が上手くつかえない。最悪の状態は左右の足が居ついてしまう場合であるが、両足が居つけば、手を振りまわすことになり、十分な力が出せない。
足が上手く動くためには、腰腹を上手くつかわなければならない。腰腹が上手くつかわれないと足がバタついたり、体重が足に乗らず、切れ目のない体重の移動が出来ない。
つまり、技を上手く手で掛けるためには、腰腹が動き、次に足が動き、そして手を動かすことになるわけである。まずは腰腹、そして足を上手くつかわなければならないわけである。

今回は、この内、足を上手くつかわなければならない事に焦点を絞って研究してみたいと思う。
これまで足に関しては、足は腰腹に従って進め、右左を陰陽でつかい、十字の撞木足で進める等と書いてきた。
今回はこれに加えて、足を上手くつかう方法として、足底、特に踵を上手くつかうということを研究してみたいと思う。

足底は足の裏である。この足底を上手くつかうと技が上手く掛かるようになるようである。足底を上手くつかうためには、まず、足底に意識を入れることだろう。そして足底がしっかりした面になっている意識を持つことである。これによって己の体を支えたり、体の移動が安定して出来るようになるはずである。

また、足底がしっかりした面になっていれば、踵が上手く働いてくれるのである。足は右左陰陽で、そして撞木足で動くが、これが上手くできるためには、踵から着地し、踵から小指球・母指球・爪先に体重が移動しなければならないが、そのために足底はしっかりした面でなければならないのである。

相手が正面打ちで打ってくる手を受ける際も、踵で着地して爪先に体重を移動して進んで上げる手で相手を導くのである。
この踵の働きは剣の素振りでよく分かる。手を上げたり下ろしたりするのを足底でやるのである。足底をつかわないでやれば、喩え、それを腰腹でやったとしても、どうしても手主体の手振りになってしまう。それに下に落した体(体重)がどうしても、多少かも知れないが、地(畳や床)に反発してしまうはずである。勿論、体が地に反発しようが、腰腹で剣を振る稽古は必要である。体を鍛え、手足を鍛えなければならないからである。

足底、特に踵と爪先を面としてつかうと、技を掛ける手の動きは最小になり、また、己の体重を最大限つかえることになるのである。
地からの足の力、腰腹からの力が手先に集まり、相手にその力が伝わり、そしてその力が己の腹に戻ってくる。ここから阿吽の呼吸で技をかけることになるのだが、手先に注意すべき点がある。それは技を掛ける手の手先も足底と同じようにしっかりした手になっていなければならないことである。この手がふにゃふにゃだと足底の働きができないし、効果がないのである。手先、指先、小手にしっかり気と力を満たして、指先を開き、手先と小手を前後に伸ばしてしっかりした手先をつくり、この手で相手に手を掴ませたり、打たせた手を受けるのである。

更に、足底、特に踵と爪先を面としてつかっていくと、気の動き、そして魂の稽古に繋がっていくように思えるのである。
足底と踵を鍛えていきたいものである。