【第569回】 仙骨 その2

前回の「仙骨」では、仙骨が合気道の技をつかい、体をつかうために大事な働きをすると書いたが、今回も引き続き「仙骨」について研究してみることにする。
研究するとは、主に「仙骨」に関する情報・資料を得るために、医学専門書やお能、スポーツなどの専門書にあたり、「仙骨」に関する事を調べる、そしてそれで得たことを、相対稽古で試し、「仙骨」の働きや法則を確認し、身に着けていき、技に遣っていくことである。

まず、手元にある医学専門書「カラー人体解剖学」(西村書店)を見ると、「仙骨は三角形をしているが、この形状は体重を軸性骨格から左右の下肢帯に伝える基礎をなしている」、「仙骨の後面は、特に股関節の動きに関与する大殿筋の付着部となっている」「仙腸関節を安定化させる靭帯が付着している」とある。
確かにこの仙骨を意識して技を掛けたり、四股を踏むと、仙骨が体重を下肢帯に伝えていることが分かるし、仙骨にいろいろな靭帯に働いていることがわかる。

次に、仙骨を意識し、重要視しているお能を書物「能に学ぶ身体技法」(ベースボールマガジン)で調べてみると、「人間の重力の中心は仙骨の2番目の前あたりにあります。仙骨は骨盤を形作る骨のひとつですが、“仙人の骨”という名を持つとおりとても大事な骨です。英語でも“聖なる骨”というように、まさに身体神殿の中でも最も重要な場所、身体を貫通する重力の御座なのです」とある。
更に、「その重力の中心(仙骨)とそこから上下に伸ばした線(重力線)は、スポーツにおける安定性と自由度を決めます。重力は動きの自由度を奪いますが、その代りに安定性をもたらします。しかし、安定さは下(重力)に向かっての力だけではありません。同時に上に向かっての力が働くことからこそ、安定性とともに自由度が実現されるのです。これを軸意識と呼びます。軸意識によって武術の蹴り等の片足立ちの必要があるものなどがより効果的にできるようになります」とある。
この軸意識は、前回の「仙骨」でも書いている「摩擦連行」ということになろう。

これらのことを踏まえて、道場での相対稽古で、技を通して「仙骨」の働きを確認するわけであるが、これまで確認できたことは、

仙骨にはまだまだ大事なことがあるだろうが、時間と己の能力の関係で今回はここまでとなる。