相対稽古で技を有効にかけるためには、いろいろな必要事項がある。稽古は、その無限とも思われる必要事項を、ひとつひとつ身につけていくことでもある。しかも、その必要事項には、身につけていく順序があるようである。
例えば、何といっても先ずは、しっかりした体をつくらなければならない。主に、受けで転がったり、関節を伸ばしてもらったりして、骨格や筋肉に刺激を受けながら、全体が調和して動けるような体をつくっていくことである。
体を目いっぱいに使い、一生懸命に稽古すると、ハーハーゼーゼー息切れしたり、心臓もドキドキして、それによって肺や心臓などの内臓も鍛えられることになる。
はじめは技などまともにかけられないだろう。それで、相手と対等にやろうとすれば力いっぱいやるしかないのだから、必然的に力いっぱいやることになる。それで腕力がつき、筋肉もついてくることになる。
これは程度の差があっても誰でもやっていることで、いわゆる基本の体作りということになろう。
ここまでは、稽古を一生懸命にやれば、誰でも身につけることができることである。だが、どれだけ身につくかは才能もあるが、どれだけ一生懸命にやったかにもよるので、人によって差が出てくることになる。
この基本の体ができたら、今度はこの体をどう使っていくかを考えなければならない。そうしないと、基本の体作りの段階でできた体力で技をかければよい、と考えてしまうからである。
例えば、基本の体作りで太く丸い腕ができて、腕力がつくと、どうしてもその腕力に頼って、相手を倒したり抑えたりしがちになる。もちろん、力は強ければ強いほどよいはずだから、どんどんつけるべきである。だが、それをそのまま使ってしまうと、魄の稽古になってしまい、合気道の稽古ではなくなってしまう。
腕力のついた体がある程度できたら、今度はそのつかい方である「用」を考えなければならない。体から用である。
例えば、はじめに体、とりわけ筋肉がものをいう稽古法に、諸手取り呼吸法がある。体を用にして使っていくわけだが、それには次のような段階があると考える。