【第315回】 小指を大事につかう
武道では、小指のつかい方が大事であるといわれる。剣道や居合道などでは、竹刀や剣を小指を絞めて持つように指導を受ける。
合気道でも小指のつかい方は大事であるが、相対稽古で技をかけあうときは、相手を倒すことに一生懸命になりすぎて、小指のつかい方まで気持ちに余裕がないのが実情のようだ。
しかし、小指のつかい方は大事なので、それを研究し、稽古を通して会得していかなければならないと考える。
まず、なぜ小指が大事なのかということである。合気道で技をつかう際は、体の表(背中や腰の側)の力をつかわなければならない。体の裏(胸や腹の側)をつかっても大した力はでない。それが最も分かりやすいのは、何度も書いたように「後ろ両手取り」であろう。また、体の裏をつかっていると、膝や腰を痛めることにもなる。
小指に力を入れるとその力は、腰や尻、そして腹に感じるはずである。
小指に力を入れると、尺側手根伸筋・屈筋から腰、腹とつながり、小指からの力は体の表を流れる。
逆に、親指と人差し指をつかうと、長母指伸筋・屈筋から体の裏側を伝わって肩で力が止まってしまい、腰腹の力が出ないし、肩を傷めたりすることになる
小指は、技をかける際に大事な働きをする。それには次のような働きがあるだろう。
- 小指で相手と結ぶ(例 正面打ち一教)
要点:小指はちょっと当てるだけで、握り込むなと教わっている
- 小指を引っかけて導く(例 坐技呼吸法(写真)、呼吸法、三教、横面打ち)
要点:縦で持たせた手のひらを十字に反すと小指が引っかかって相手が浮き上がってくる
- 小指の腹で相手の気持ちを導く(例 入身投げ)
要点:入身転換してから、小指を相手の腕の上を滑らせながら手刀で切り、相手の気持ちを前に引き出す
- 小指で切ってきめる(例 二教裏、交差取り二教)
要点:横からの手刀を縦にし、小指で縦に切る。切る方向は、小指が相手の鼻を切る線上。
- 小指から反して導く(例 片手取り転換、呼吸法)
要点:親指を支点にして小指から反すが、指先や手先からではなく、腰から動かさなければならない。
小指は大事につかいたいものである。
参考文献:「筋肉のしくみ・はたらき事典」(西東社)
Sasaki Aikido Institute © 2006-
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