【第578回】  合気道は魄力ではないとは

合気道は技を練り合って精進しているわけであるが、腕力や体力の力に頼ってはならないと教えられている。しかし、実際に稽古をしていると誰でも痛感するように、体力や腕力のある相手には技はなかなか効かないし、牛耳られてしまうものだ。

合気道の技は、相手が大きかろうが、重かろうが、また腕力あろうがなかろうが、相手に関係なく効かなければならないのである。
これまで、これはどういうことなのか、それはできるのか、出来るとしたら何故そういうことができるのか、どうすればそれが出来るようになるかを考えてきた。最近、お蔭様でその解決の糸口が少し見えてきた。

結論は、相手の大きい、重いなどに関係なく技をつかうことは可能であるということである。何故ならば、合気道は魄の上の魂(心、精神)で技をつかい、また己の力だけでなく宇宙の息と力を頂いて技をつかうということが分かったからである。

体や力の肉体的・物質的な稽古をしているうちは、体が大きい者、腕力のある者が有利なのは当然である。しかし、どんな重い、大きな、腕力のある相手でも、その重さが消えてしまえば、大きさも重さも関係なくなってしまい、自由自在に導き、制することができる。
つまり魄の稽古ではなく、魂(これはまだ魂の入り口)の世界で技をつかうということである。

宇宙の法則に従い、息と心体をつかうと相手は浮き上がってくるのである。入身投げでも天地投げでも受けの相手は浮き上がり、無重力状態になる。重さを感じることなく、相手を倒すのも押さえるのも自由自在にできるのである。

これが開祖が云われている、「天の運化が、すべての組織を浮きあがらせる魄と魂の岩戸開き」ということであると考える。つまり開祖は『合気神髄』で、「合気はまず十字に結んで天ていから地てい息陰陽水火の結びで、己れの息を合わせて結んで、魄と魂の岩戸開きをしなければならない。魄は物の霊を魄という宇宙組織のタマのひびきが魂である。宇宙を動かす力を持っていなければいけない。天の運化が、すべての組織を浮きあがらせ、魄と魂の二つの岩戸開きをする。これをしなくてはいけない」といわれているのである。

息と心体を天の運化に合わせてつかえば、大きさ重さに関係なく、どんな相手も浮き上がらせることができということを開祖は保証されているわけである。

確かに合気道は魄力ではなく魂の世界の修業である。見える世界ではなく、目に見えない世界なのである。