【第28回】 魂、精神社会に

今はまだ、物資文明、魄の世界である。モノを沢山もったもの、力の強いもの、そして金を持ったものが有利な社会である。

物質文明社会では、往々にして見えるものしか信じない傾向にある。金があることを示すために、高価な車に乗ったり、高級品を身につけたりする。力の強いものはそれを使って、力のあることを認めさせようとする。

しかし、これからは、開祖が言われたように、魄を土台にして魂、精神が主役にならなければならない。モノや力で人を評価するのではなく、魂、精神で人やモノを評価するようにならなければならないだろう。そして、いずれ開祖が言われたように、人の考えがテレビを見るように見え、言葉を使わずに、交信ができるようになるかもしれない。もしそうなるとしたら、どんなにいい服装や身なりをし、どんなに高級車や邸宅に住んでいても、その人の考えや精神がしっかりしていなければ、人は評価しないだろう。そうなると人やモノの評価は魂、精神の優劣ということになる。

合気道の世界、特に稽古の時間は俗世界から離れた別世界であり、金持ち、貧乏、仕事、役職、社会的な地位などなど一切関係がない世界である。この世界で大事なことは、どこまで深く合気道を理解し、自分が変わっていけるかである。合気道は、そういう意味で、開祖が提唱された、世俗の魄の世界から魂、精神の世界に入れる、一つの入り口であろう。