【第935回】 後進を鍛える
これまで半世紀以上稽古をしてきたので大分合気道の事がわかってきたように思えるようになってきた。これは自身の心であるから間違ってはいないし、信じられると思う。これまでには無かったことである。道場稽古は週三日続けている。毎朝の禊ぎも20年以上続いている。大先生の難解な教えも大分氷解してきた。また、他の武道や他の分野の研究にも首を突っ込んでいろいろ学ばせて貰い、合気道に取り入れてきた結果だろう。
後は魂の技が出るようにする事が課題であり、稽古の目標である。
これからも魂に挑戦していくわけだが、最近、新たな目標が出て来た。それは後進を鍛えることである。鍛えるという事は教えるといってもいいだろう。これまで自分が学んできた事を後進に伝えておくということである。自分が身につけたこと、会得した事を後進に残すことである。その理由は、①これまで自分が身に着けた事を再発見し、身に着けていくのはそう容易ではないと思うからである。これから人はますます忙しくなるはずなので、ますます難しくなると思うからである。②これまで教えを受けたりお世話になった大先生をはじめ先達や先輩へのお返しである。そのお返しを後進に返すのである。そうすれば教わった大先生をはじめ、先人は喜んでくださると思う。
それではどのように後進を鍛えるのか、教えるのかということになるが、次のように考えている。
先ずはこちらの受けで後進を鍛えることである。
- 後進に力一杯技を掛けさせる。打つのも掴むのも思う通りにやらせるのである。
- その力いっぱいの技を受けてやる。受けを取ることである。受けを取り乍ら教えるのである。どんなに力一杯でも制することができること、そしてどうすれば制することができるかなどを示すのである。
- まず、受けでの体の形を崩さない。手足体がバラバラにならず一体となって動くこと
- 受けも取りと同じように手足は左右陰陽で規則的に動く
- 己の手は顔の前、腹の前、所謂、正中線の前にある
- 相手に背を向けず極力腹を向けるようにする。因みに、腹が相手に向いている間は相手への攻撃可能性があるということである。つまり、受けは只攻撃から逃げるのではなく、攻撃に転じるためのものでもあるわけだ。
- 相手の息に合わせて息と体をつかう。受けはイクムスビの息づかいをつかうはずなのでイクムスビで受けを取る事になるはずである。相手が未熟で息が上手くつかえなければ、こちらのイクムスビの息づかいで相手を導いてやればいい。
このような受けから後進が学んでくれればいい。
勿論、後進を鍛える一般的な方法は後進に技を掛ける事である。しかし、後進をただ投げたり決めればいいという事ではない。それだけでは後進は納得しないからである。後進達は別の何かに期待しているのである。本人たちは分からない何かを期待しているのである。それで技を掛けるのである。
それは例えば、合気道の技の法則である。宇宙の営みを形にした技を掛けるのである。足、そして手を右→左→右→左・・・と規則正しくつかって技をつかい、三元である剛柔流で技をつかい、アオウエイの息と言霊で技をつかい、気で技をつかう等である。この他の例はこれまでの論文に書いてきた通りである。
これで後進を鍛えていこうと思っているところである。
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