【第924回】 気を出すためには魄を下にする

これまで「魄が下になる」のテーマで何十もの論文を書いてきた。お陰で今ではこの「魄が下になる」で体と技を多少つかえるようになった。そして「魄が下になる」は気を産み、魂が働くためには必須事項であることを確信した。片手取り呼吸法や正面打ち一教でも、魄が下になると合気の技をつかっているという実感と快感が得られるようになった。
しかし、以前の自分同様、初心者や後輩達の技は魄が下にならず上になるのでいい技にならないわけだが、何処に問題があるのか、どうすれば魄が下になるようになるのか等を考えてみたいと思う。

まず、魄とは何かである。簡単に言えば、魄とは「肉体」である。つまり、魄が下になるとは、肉体が下でその上に気・魂が上、表に出て魄の肉体をつかうということである。合気道は手で技を掛けるので、相手と接する手が主な魄になる。故に、魄を下にするとは、技をつかう己の手の下に相手を置くことになる。また、己の手と腹は結んでいるので、相手を己の腹の下に置く事になる。そうすると腹で相手を制し、導くことが出来るようになる。ここで魄が下にあることを実感できるのである。
従って、手は動かす必要はなくなる。手はこれまで書いているように、動かしてはならないのである。動かさないで動くようにするのである。手を動かした途端に魄が上になるからである。初心者達が魄を下にできない大きな理由の一つが、手を振り回してしまうこと、手を動かしてしまうことなのである。

魄が下になり、魄が下にあり続けるためには手を動かさないで、手が自ら動いてくれるようにするのだが、そのためにはどうすればいいのかということになる。
まず、最も一般的な基本的やり方は、腹と手をしっかり結び腹で手をつかう事である。手は腹で動かされるわけである。また、左右の足の陰陽でも手は動く。足で手をつかうという事である。更に、手掌の母指球を体(支点)とし小指球を用として母指球(親指)に気を流すと親指以外の指が外・内回転する。正面打ち一教での手はこれで上がる事になる。

技をつかっていて、魄が下にあるかどうかは分かるのか、また何でわかるのかであるが、それは分かるし自覚できるのである。それは気である。気が出れば魄が下にあるということになるのである。魄が下になり、そして気が上、表に出たということである。
本当は気の代わりに霊や魂が表に出ればいいのだが、今のところは出るのは気ということである。いずれこの気が霊、魂に代わってくれるはずだと期待しているところである。

魄が下になるようにしなければ気は生まれないが、下になる魄、つまり肉体もしっかり鍛えなければならないことも再確認した。
大先生は「肉体すなわち魄がなければ魂が座らぬし、人のつとめが出来ない。
合気は魄を排するのではなく土台として、魂の世界にふりかえるのである。魄の世界を魂の世界にふりかえるのである。魄が下になり、魂が上、表になる。」と、魂の土台になる魄も大事であるから十分鍛えなければならないと教えておられるのである。
気を出したいなら、魄の肉体を十分鍛錬し、そしてその鍛えた魄を下にするようにしなければならないということである。