【第922回】 息陰陽と水火

大先生は、「宇宙と人体とは同じものである。これを知らなければ合気はわからない。なぜなら合気は宇宙のすべての動きより出来ているからであります。」と教えておられる。科学の世界でも人はミニコスモスであると言われているから、人体は宇宙と同じであろうと思っていた。勿論、宇宙即人体ではなく、宇宙の営みや働きや心の面で同じであるということである。

最近、ようやく宇宙と人体とは同じであると確信するようになった。合気が分かってきたということになれば喜ばしいのだが。その同じ例を2,3挙げてみる。
まず、宇宙の心は宇宙、万有万物の完成を目指すために生成化育しているということであり、人も地上天国、宇宙楽園の完成のために生き、稽古に励んでいるという事である。どちらも宇宙や天地の完成のために存在しているという事である。
次に、宇宙、万有万物の姿は一霊四魂三元八力で構成されているが、人もまた、一霊四魂三元八力が与えられていることである。これまで書いてきたので詳細は省く。
更に、宇宙、天地万有は布斗麻邇御霊の働きによって生まれ、営まれているが、人も布斗麻邇御霊によって生まれ、活動していることである。

さて直近で更に分かってきた事である。天地の息と人の息は同じである事である。
「人の息と天地の息は同一である。つまり天の呼吸、地の呼吸を受け止めたのが人なのです。」と大先生は言われているのである。
しかし息といってもそれまで思っていたように単純ではない。息をはっきり理解しないと先に進めないのである。

息を大先生は次のように説明されている。
「息を出す折には丸く息をはき、ひく折には四角になる。丸くはくことは丁度水の形をし、四角は火の形を示すのであります。丸は天の呼吸を示し、四角は地の呼吸を示すのである。つまり天の気によって天の呼吸と地の呼吸を合わせて技を生み出す。」これを形にすると次のようになる。

この天と地の息づかいは日常でもつかっているわけだから難しくない。しかしこの息づかい・呼吸では技は生まれない。技だけでなく宇宙も万有万物も産まれないし、営み事、生成化育ができないはずである。
それではどうすればいいのかということになる。それを合気道では天地水火陰陽の理といい、息陰陽水火の結びでなければならないのである。つまり、息の陰陽に水火を結び付けたイキづかいでなければならないという事である。何故ならば、宇宙も人間も水火の仕組みで動いているからである。また、宇宙も人体も水火で満ちているのである。これを「一挙一動ことごとく水火の仕組みである。いまや全大宇宙は水火の凝結せるものである。みな水火の動きで生成化々大金剛力をいただいて水火の仕組みとなっている。水火結んで息陰陽に結ぶ。みな生成化育の道である。」という。

息陰陽とは、布斗麻邇御霊での息を吐きながら腹の中で気を引き、出すの陰陽と息を引き乍ら胸の中で気を引き、出すの陰陽の息づかいと考える。この息陰陽の息づかいは複雑微妙である。

この息陰陽に結びつけるのが水火である。「宇宙も人体も水火で満ちている」。また、「人が呼吸しているのも、火と水の交流による。火と水が一杯詰まっているから世界は動き、ものは活動する。」と言われるから、水火を考えてみると次のような形になるだろう。
これが水火の凝りだろう。宇宙も天地もこの凝りである。人体の腹はこの典型であろう。腹は水火によって常に凝っており、萎むことはない。名人、達人の腹が張っているのはこの水火の凝りということになるだろう。気が出入しても腹は張ったままである。
よく考えてみるとこの水火の凝りは普段に営まれていることであることがわかる。心臓はこの水火で広がったり、縮んだりを繰り返している。息陰陽とは関係なく働いてくれている。
しかし、合気道で技をつかう際は、この水火に加え、息を陰陽につかわなければならないのである。