【第920回】 第920回  体の部位を一緒につかう

これまで体はバラバラにつかわない、と書いてきた。その主要な例は、手足を腹と結び、腹で手足をつかわなければ体はバラバラに働くということである。
この腹を中心に手足と頭の五体をつかうことは、体がバラバラにならないで合気の技をつかうために必須であるが、これだけではまだ不十分であることが分かってきた。不十分と云う事は十分な力、本来の力が出ないということである。その原因を敢えて言えば、気や魂が出て来ないということであろう。気や魂が出るような体づかいをしなければならないということになるだろう。

そこで体を一つに結んで一緒につかうわけだから、更に体の別々の部位を結んで一緒につかわなければならないものもあるのではないかと考えた。
そして次のようなモノがある事が分かってきた。

  1. 頭と足を結び、つかう:これは前回の「第919回 隙のない足をつくる」で書いたが敢えて取り上げる。天と地、頭と足を結ばずに体と技をつかえば体の動きも技もバラバラになるからである。つまり、これは体がバラバラにならないための基本ということであると考えているのである。
  2. 足の裏(足底)と手の平を一緒につかう:これまで足の裏の働きも大事であると言ってきた。足の裏は踵→(足中部(骨))→母指球である。これで下半身は大分つかえるが、手先からの力は十分ではないし、手先からの気も十分出ていないのである。手先を更に強力にする必要があるわけである。そこで考えたのは、人の体はひとつにまとまっているわけだから、体の部位と他の部位とは結んでおり、技等の仕事をする場合は、それらの必要な体の部と部を結んでつかわなければないのではないかということである。そこで足底と手の平が結んでいるとし、足底と手の平を一緒につかってみると、手先が強力になり、大きな力が出るようになったのである。
    また、更に大事な事がわかり、これまでの理を修正、補完することになったのである。
    それは、上記にもあるよう、足の裏は踵→(足中部(骨))→母指球とつかうと書いたが、足の裏は踵→小指球→母指球が重要な働きをすることを確認したのである。これはずっと以前には書いていたし、また、手掌(手の平)のつかい方とも同じであり、手足のその部位と結び、共に働く事になることが確認されたからである。つまり、
    足の裏: 踵   → 小指球 → 母指球
    手掌 : 掌底  → 小指球 → 拇指球
    ①足の踵が床に着けながら足を進め、手の掌底に気を入れながら手を前に進め、
    ②足の小指球に体重を移動しながら、手の小指球に気を入れて手を手鏡に返す
    ③体が足の母指球にのり、横(左、右)に返えると、手も母指球を支点(体)として円く返す
    手の平と足の裏は一緒に進み、返るのである。
  3. 膝と肩を一緒につかう:これまでは主に足先と手先に力と気を込めて技をつかってきた。そして足先、手先がしっかりするよう、力が出るように鍛えてきた。しかし、まだ十分な力が出ていないようである。
    そこでそれは、体の末端からの力は、体の中心からの力に比べれば弱いということを思い出した。
    そして足先、手先に代わりに膝と肩をつかえばいいのではないかと考えたのである。つまり、膝と肩は一対であり、この一対を一対でつかえばいいだろうということである。
    膝と肩を一対、つまり一緒につかうということは、膝と肩が結び、繋がったまま切れずに働くという事である。具体的に云えば、膝と肩が結ぶとは、肩が膝の上にのるという感じである。肩が膝の上にのるためには、胸を張り、肩を拡げればいい。
    膝がしっかりしていなければ、体の軸がつくれないので膝は重要であるが、重要に感じるのは膝から下の部位(図)である。
    この部位が真っすぐで強固でなければならないし、体を載せて前後、左右に一軸で動かなければならない。そのためには膝と肩が結び、膝と肩が一緒に動かなければならないのである。膝と肩の結びが切れて体が動けば、体が捻じれ、軸にならず、手足ともどもバラバラに動くことにある。
    膝と肩が緊密に繋がっている感覚は、胸を張り、両肩を拡げればいいが、更に寝床の上で両膝を立て、両膝を押し付け合うと肩の凝りが薄らぐ。肩こりなどは膝関節を緩めればいいだろう。
体で一緒につかう部位はもっとあると思うから、今後も研究していく事にする。