【第919回】 隙のない足をつくる

合気道の技は主に手で掛けるので、これまで手のつかい方及びその手のつくり方を研究してきた。それを要約すれば、手が名刀のようにしっかりし、名刀のようにつかわれなければならないということである。折れ曲がったり、緩んだ手では不味いし、直線的で、そのために動きが切れてしまう手のつかい方も不味いわけである。体の力、天地の力が手先に出るようにしなければならないのである。
体や天地の力の流れの動きが切れると力も切れる事になり、相手の反撃にあう事になるからその技は失敗作となる。この時点で隙ができることになる。少しでも隙ができれば技にならない。
この隙をつくるのは避けなければならないと、大先生は次のように教えておられるのである。
「天地の道理を悟り、顕幽一如、水火の妙体に身心をおき、天地人合気の魂気、すなわち手は宇宙身心一致の働きと化し、上下身囲は熱と光を放つごとく寸隙を作らず、相手をして道の呼吸気勢を与えず、よってもって和し得ることを悟るべし。」(合気神髄 P.170)

手をつくり、手をつかうを研究しながら技を稽古しているが、まだまだ不完全であるので更なる修練が必要である事が分かる。しかし、手も大事だが足の大事さにも気がついたのである。技の動きで隙が出来る原因は手にもあるが、足が更なる重大な原因をつくるようなのである。その理由は、体をつかう(動く)際、足→手であり、足が手より先に動き、足で手をつかうことになるからである。
その証拠に、足を強靱にすると手、手先も強靱になり、足を上手くつかうと手が上手く働くようなのである。

しっかりした足を意識し、その重要さが分かるのは三角体の姿勢であろう。

天の御中主神(頭)、高御産巣日(足)、神産巣日(足)の△体で、足は高御産巣日と神産巣日であり、布斗麻邇御霊の象はとなり、地に天からの力(気)が地に下りていくということである。よって、左右の足は地に着いたしっかりした足になるわけである。まずはこれからはじめなければならないだろう。

更にしっかりした足をつくるにはどうすればいいというと、

(1)足に腹、つまり、体重を載せる等にする。そのためには、体を一本の軸につかう事である。技を軸の左右陰陽の移動でつかえばいいことになる。

(2)足底は踵から地に着き足中部(足中骨)に下す。体の縦の動きをする。

(3)

(4)母指球で体を横に返す。踵→足中部→母指球で体を横に返すのである。

(5)
踵→中速部(骨)の縦と母指球の横の返しで十字になり、大きな力が生まれると共に、足、手、体の動きが連続して続き、切れないのである。

足はこのように技をつかいながら鍛えていけばいいが、その他にも鍛錬法がある。例えば、歩く事である。上記の事を意識して歩けば足は相当鍛えられるはずである。もう一つある。四股踏みである。二本の足が一本の軸になるわけだから、通常の二倍の負荷が足に掛かる。また、布斗麻邇御霊の息づかい、気づかいでやれば、しっかりした足ができるはずである。

名刀の手のように足がしっかりしないと技は上手くかからない。正面打ち一教が上手くいかない原因の一つは足が十分強靱でない事である。
足も折れない足、歪まない足、つまり隙をつくらない、隙のない足にしなければならない。