【第912回】 魄が下になるためには

魄が下になり、魂が上になる事を『合気道の思想と技』で研究してきた。お陰で、魄が下になるとはどういうことなのかが分かってきた。これからはこれを技で実践し、技につかえるようにしていかなければならないと考えているところである。

魄が下になるように技を掛けていくと、魄が下にならなければ技にならない事が確認できるだけでなく、次のような事も分かってきた。
一つは、魄が下になるということは、魄が下にあり続けなければならないということ。魄が一瞬でも下でなくなったら技にならないということである。片手取り呼吸法が上手く掛からないのは主にこれが原因であると見る。
二つ目は、魄とは何かである。魄とは何かはまだ完全にはわからないが、先ずは手と考えている。技を掛けるのは手であるし、またそう実感するからである。故に、手(手の重み)が常に地の重力に向いている事を魄が下になると考えている。一瞬でも手が地との結びがなくなれば技にならない事になる。手を無暗につかうのが不味いということはこの事でもある。
三つ目は、魄が下になり続けるためには、魄の手は腹と足と結び、手と足の結びが切れないで、繋がり続けなければならない。この繋がり続けるためには、手は腹や足でつかわなければならないことになる。また、これで腹と足の重みが手先に伝わることになる。
四つ目は、下になる魄の上にくるものが魂であろうということである。魂とはどういうものなのか、どのような働きをするのかを模索しているわけだが、魄の上で働いているものこそ魂であるはずなので、大いに手掛かりになるはずだと期待しているところである。

これまで魄が下になるような稽古をしてきた。
まずやったのは、片手取り呼吸法である。持たれた手(手の重心)が常に地を向くように、つまり、地にあるようにつかった。手先を円の動きでつかえばいい。手をただ動かすと魄が上になってしまう。
次に挑戦したのは正面打ち一教で、布斗麻邇御霊とあおうえいの言霊で技と体をつかった。ウーで手鏡をつくり腹と結んだ手の下に相手を入れてしまうのである。相手は凝結し、こちらと一体化するのである。
そして直近やっているのは、足⇒足⇒手の順で手をつかうと手(魄)が下になることがわかったのである。片方の足や足を踏ん張って手をつかっての手(魄)は下にならないということである。