【第907回】 基本中の基本 坐技呼吸法

合気道の基本中の基本技は「正面打ち一教」であると考えているとこれまで書いている。そして稽古を続けるに従いこれは間違いないと確信している次第である。多くの基本技、否、ほとんどの合気道の技は、この正面打ち一教の動作(動き)、体づかい、息づかいなどの要素がつかわれるからである。従って、正面打ち一教が上手くつかえるようになれば、他の技も上手くつかえるようになるし、また、複雑な技や新しい技もこの正面打ち一教の要素をつかってやればいいことになる。

坐技呼吸法は正面打ち一教と同じように大事で不可欠のものである。正面打ち一教のような技ではなく動作(公式には“基本準備動作”という)である。
それは坐技呼吸法である。正式名は「坐り呼吸力養成法」「正面持ち呼吸法」という。(『合気道技法』)

この坐技呼吸法が何故大事なのかを考えて見ると、

相手の手の持ち方にはいろいろあるが、主に次のようなやり方がある。(『合気道技法』)
  1. 普通に持たれた場合 
  2. 受けて持たれた場合
  3. 上からかぶさって持たれた場合
  4. 突っ張られた場合
この他に相手が出してくる手首を四教のように決めるやり方もある。
基本は1であるから、この稽古を繰り返す事である。これができれば他もできるようになるはずである。

因みに、体(手先、胴、足、頭)のつかい方は正面打ち一教や剣の素振りと同じである。つまり、坐技呼吸法も他の技の基本的な要素や元素を伴ってつかわなければならないということであり、独自で孤立したものではないということである。

坐技呼吸法が出来るようになると、技も変わってくる。すべての技に坐技呼吸法の動きと形を入れていくのである。また、剣も居合、更に胸取りもこれでやればいい。坐技呼吸法と他の技の錬磨で相乗効果が生まれ、上達することになる。
坐技呼吸法で更に鍛えたければ坐って鍛錬棒を振るのがいいようだ。重心移動で腹が練られるし、片手でも相当な重さの棒を振る事ができるようになる。
坐技呼吸法で呼吸力と体をつくるといいだろう。 参考文献 「合気道技法」(植芝盛平監修 植芝吉祥丸著 光和堂)