【第906回】 根源にさかのぼって攻究する

合気道を60年ほど修業している。合気の道を外れないように、出来る限り大先生の教えに従ってやってきたつもりである。しかし合気道精進の基本は合気の技の錬磨であるが大先生のような技にはならないどころか、近づくこともできなかった。
技を錬磨する基となるのは大先生の教えである。しかし最早、大先生から直に教えてもらえないので、大先生の教えのつまった書き物から学ぶことになる。主に『武産合気』『合気神髄』である。両書を繰り返し何度も何度も読んで技に取り入れてきた。

はじめは難解でほとんど理解出来なかったが、構わず読んでいった。回を重ね、繰り返し読んでいく度に少しずつではあるがわかる事が増えていき、20年続けた今は大分わかるようになってきたようだ。と同時にこれらの難解な『武産合気』『合気神髄』に挑戦してきてよかったと思うのである。もし『武産合気』『合気神髄』を読んでいなければ大先生が教えようとしている真の合気(武産合気)の道にはのれないと分かったからである。例えば、『武産合気』に、「フトマニ古事記によって、技を生み出していかなければなりません」とあるが、フトマニ古事記を道場稽古で聞いたこともなく、『武産合気』を見て初めて知った次第である。
その教えに従って布斗麻邇御霊と古事記を研究することになる。そして大先生も居られた大本教の出口王仁三郎教祖がまとめられた『大本言霊学』を研究する。これで布斗麻邇御霊と古事記の関係が分かり、フトマニ古事記という語の意味も分かることになる。
このフトマニ古事記を技にしていくことになるが、技が変わっていくに従い、『大本言霊学』には源典があることがわかったのである。それは『言霊秘書』(山口志道著)である。『言霊秘書』を見ると、『大本言霊学』の文章は『言霊秘書』とほとんど同じであり、『言霊秘書』が基になっていることが分かった。

『言霊秘書』のお蔭で布斗麻邇御霊と親音“あおうえい”で技をつかうようになったのである。これで「フトマニ古事記によって、技を生み出していかなければなりません」という大先生の教えに則ったことになるわけである。
しかし、これは『武産合気』『合気神髄』には詳しく書いてなく、根源にさかのぼってはじめてわかったわけである。

また、『武産合気』には、「高天原に神つまります、というが高天原には神様がつまっている。つまり神が活動している姿で、火と水が和合して活動する姿、火と水の相和している姿を、天之浮橋ともいうのである。火水というのは体であり、イキとは用であります。この理をよく知るには、すべて根源にさかのぼって攻究することである。」(武産合気P.108)とあり、これを理解するには根源にさかのぼって攻究しなさいと言われているのである。つまり、この場合は『言霊秘書』で研究しなさいという事である。
今後、『武産合気』『合気神髄』では十分分からない事や不足していることがあればその基となる根源にさかのぼって攻究しなければならない事になるという事だろう。