【第901回】 魂の学びの次元に入る

これまで書いてきたように宇宙の法則に合するように技と体をつかって稽古をしてきた。合気道の技は宇宙の営みを形にしたものであるから、その技を身につけることによって宇宙を取り入れているわけである。そして最終目標は宇宙との一体化である。
これ以前は、力に頼った、所謂、魄の稽古をし、肉体主体・主導の技づかいであった。次に息が主体となり、息で肉体を動かす技づかいに変わった。そして息が気に変わり、気で技をつかうようになった。
ここまではまだ魄の次元の技づかいであるが、最近、技づかいが変わった。魄の次元から魂の次元に変わったのである。これまで合気道は魂の学びでなければならないと思っていたが、ついに魂の学びの次元に入ったようなのである。つまり、真の合気道、武産合気の領域に入る事ができたわけである。

何故そう言い切れるのかというと、己がつかう技が大先生の言われる武産合気（真の合気道）の技に重なってきたことと己の体でそれを実感し、技に表わすことができるようになったからである。
大先生は、『合気神髄』で次のように教えておられる。
「技は、すべて宇宙の法則に合していなければならないが、宇宙の法則に合していない技は、すべて身を滅ぼすのである。このような技は宇宙と結ぶことはできない。ゆえに武産の武ではない。宇宙に結ばれる技は、人を横に結ぶ愛の恵みの武ともなる。宇宙と結ばれる武を武産の武というのである。
武産の武の結びの第一歩はひびきである。五体のひびきの槍を阿吽の力によって、宇宙に拡げるのである。五体のひびきの形に表れるのが「産（むすび）」である。すべての元素である。元素は武の形を表し、千変万化の発兆の主でもある。」

この教えで自分が出来るようになったのは、“ひびき”である。ひびきを生じ、相手と結んでしまうことである。そしてまた後に出て来る「結び」である。尚、このひびきこそ「魂のひれぶり」であると実感する。
この教えにあるように、「武産の武の結びの第一歩はひびきである」であるわけだから、ひびきが生じ、結びの形が現われれば武産合気の次元の稽古に入ったという事になるわけである。
但し、これはその次元への第一歩ということであるから、第二歩、第三歩・・・と続くことになる。これをこれから探究し、修業していくわけである。どこまで続くのか、遠い道のりである。
しかし、有難いことに、どこまで修業を続けるのかは分かっている。大先生は、「山彦の道がわかれば合気は卒業であります。」と言われているから、山彦の道までということになる。これからの新たな次元の修行は楽しみでもあるが、不安もある。だが、これまでのように大先生が助けて下さるはずである。
何とか宇宙と結ばれる真の合気道（武産合気）を身に着けたいものである。