【第900回】 膨らませ、縮める

合気道の修業の目標は宇宙との一体化である。宇宙との一体化のために合気道の技を練り、宇宙の法則・条理を身につけて宇宙を取り入れ宇宙になろうとしているわけである。半世紀以上修業してきたわけだから、それ相応の宇宙の法則・条理は身についたと思うが、何かが欠けていておかしいと思うようになった。しかし、このまま宇宙の法則を探し、身につけて技をつかえるようになるには時間が掛かり過ぎ、お迎えが来るまでに満足できるような成果が上がらないと思ったのである。
また、宇宙は我々が思っているように複雑ではなく、単純明快な営みをしているはずだと思うようになったのである。それ故、その宇宙の単純明快な営みを見つけ、技でつかえばいいはずだと考えた次第である。

その宇宙の単純明快な営みとは何かというと「膨らませ、縮める」である。
そもそも宇宙は生成、膨張、収縮、消滅となるが、宇宙の活動期の営みは「膨張、収縮」となる。大宇宙だけでなく、その中の星もそうである。勿論、地球も同じである。
人間でいえば、生まれて死ぬ間の活動期では「膨張、収縮」で活きているということになる。例えば、生命の基になる心臓、肺、血管などは「膨張、収縮」である。

この宇宙の営みの「膨らませ、縮める」で技をつかうのである。息で体及び任意の体の部位を膨らませ、締め、膨らませるのである。
これには二種類あるようだ。
一つは、丸く(○)膨らみ、点(・)に縮む。
二つ目は、横に拡がり・縮み(━)、縦に上下に伸び・縮み(|)する。

だが、これまでやってきた布斗麻邇御霊やあおうえいの言霊を捨てたり、見捨てるわけではない。そうではなく、これまで培ってきた布斗麻邇御霊やあおうえいの言霊を「膨らませ、縮める」に組み込んで一緒につかうのである。ただし、主役は「膨らませ、縮める」ということなのである。
「膨らませ、縮める」と布斗麻邇御霊・あおうえいの言霊の関係は次のようになる。「膨らませ、縮める」は○膨と○縮とする。

○膨と○縮○膨○縮○膨  ○縮○膨○縮
布斗麻邇御霊
あおうえい
これまで布斗麻邇御霊やあおうえいの言霊で技と体をつかって技を練り、体をつくってきたが容易ではなかったし、まだまだ不完全である。このままやってもどうしても限界があるようなのである。そこで「膨らませ、縮める」で技と体をつかってみたのである。これは複雑でなくすぐに出来るし、間違いも少ない。只、息で体や部位を膨らませ、締めればいい。
そしてこの息づかいで技と体をつかうと上手くいく事が確認された。正面打ち一教でも呼吸法も前より上手くいく。また、この「膨らませ、縮める」で四股を踏むと体が安定するようになるだけでなく、宇宙を感ずるようになるようだ。宇宙の気が入り、天地宇宙との交流が生まれるようである。これからは「膨らませ、縮める」で技と体をつかっていくことにする。