【第894回】 円転の理

今回もまた二代目吉祥丸道主の教えによる、合気道上達の秘訣である。魄の稽古のための教えであるが、魂の稽古へ進むためには会得しなければならないものである。つまり、これを身につけないと、恐らく大先生の教えは分からないだろうし、真の合気道に入れないだろう。

今回の教えは、「円転の理」である。『合気道技法』に載っているその箇所を記す。
「合気道の技を仔細にみると、すべてが円転の理と、入身一足の理から成り立っている。円転の理とは、自己の右足又は左足、或いは体全体が中心となって、相手にその動きを及ぼすことである。すなわち、合気道技法の表現を一つの独楽にたとえるならば、この独楽の回転によって描く各点の軌跡が、完全な球体となって来る時の動きが捌きの極致だといえる。
この様な安定した態勢でくるくる廻る場合、それはちょうど颱風の目が移動しつつ諸々に偉大な自然の猛威を振るうように、あらゆるものを吸収する求心力と、遠くへはねとばす遠心力が交互に作用して、合気道の動きの偉大さを表現するものとなる。」(『合気道技法』P.31)である。

この円転の理で技がつかえなければならないのである。これができなければ合気道の技にならないということである。
しかし、円転の理で技をつかうのは容易ではないはずである。それは上記の教えにあるように、右足又は左足、或いは体全体が中心にして相手を円くまわすためには、右足、左足が軸にならなければならないし、円は一つだけでないから、足は居つかずに陰陽で交互につかわなければならないからである。

この吉祥丸道主の円転の理は、大先生の教えにつながるのである。大先生は、これを「円の動きの巡り合わせ」と云われている。手、足、腰の横の円と縦の円の組み合わせで技をつかうということで、より繊細で微妙な円の動きである。尚、「円の動きの巡り合わせ」については幾つか論文に書いているので詳細はそれをご参照ください。

「円の動きの巡り合わせ」を身につけるためには、先ずは「円転の理」を身につけなければならないと考える。合気道のすべての技を、まずは「円転の理」で稽古すべきだろう。
吉祥丸道主は、「合気道のすべての技が、多かれ少なかれこの円転の理を用いているのである。」(『合気道技法』P.33)と云われているから、どんな技でも「円転の理」で稽古できるから、思う存分稽古できるはずである。

参考文献 (『合気道技法』植芝吉祥丸著 植芝盛平監修)