【第678回】 手の縦の円を大切に

合気道の技は円の動きの巡り合わせである。そのために、複数の円の動きの組み合わせで技をつかわなければならない。
円の動きで技をつかうには、体を円でつかわなければならないし、また、円の動きで体をつかえば技になるということである。
円は縦横の十字から生まれるから体を縦横の十字につかわなければならないことになる。

体とは手や足や腰腹であるが、今回は「手」の円、とりわけ手の縦の円に的を絞って研究する。
手には縦の円と横の円がある。縦の円は、手を上げたり前に出して手を返す、「ギンギンギラギラ」のお星さまの円である。親指、人差し指、中指、薬指、小指のいずれかが支点となり、中心線となって返して(回って)できる円である。これで手首、肘、肩、胸鎖関節を支点とする縦の円ができる。
因みに、この縦の円(中心線)に十字の円が横の円である。例えば、手首では、お出でお出での手の動きである。横の円の手の支点は手首、肘、肩、胸鎖関節である。ということは、手首や肘や肩では縦と横の円の動きができることになるわけである。

いい技を生み出すには、しっかりした円をつくらなければならない。相手が力一杯に手をつかんでも、そこに力と気持ちを入れて手先を縦、そして横に返し、円の動きにして相手をくっつけて導くのだが、大事なのは、先ず縦の円をつくることである。縦の円をつくらないで横の円で技をつかおうとすると、相手に抑えられたり、結びを切ってしまったり、ぶつかってしまったり、動けなくなったりして技にならない。初心者は大体、横の円から技を掛けている。

手先(手首から先、肘から先)を、剣を構える時のように縦にし、そこから十字に返しながら円の動きにしていくのである。
これが分かりやすい稽古は「転換法(逆半身片手取り)」であろう。しっかりした手先を縦の円の動きにすると、相手と一体化し、相手を導くことができるし、手先に力が入っていなかったり、縦の円の動きになっていなければ動けないし、相手も動いてくれない。

「逆半身片手取り転換法」だけではなく、片手や諸手で取らせても、正面打ちでも、それを受ける手先は縦の動きの円からやらなければならない。力一杯、十分に気持ちを入れて手先を縦の円でつかうのである。その後に肩や胸鎖関節等を支点とする横の円で技を掛けるのである。

手先の縦の円の動きを鍛えるために杖の素振りがいい。突いたり引いたりする際に、手先が人差し指や親指を中心に円の動きをしているはずだから、それを意識して鍛えればいい。また慣れてくれば他の指を支点にしてやってもいいし、また剣でもできるはずである。