【第605回】
気への挑戦
合気道はやればやるほど難しくなる。難しくなるとは、それまで分かっていると思っていたことが、よく考えると全然わかっていないことが分かるとか、分かったことでも、それは氷山の一角であって、その下には想像もできないような宝物があるということに気づいたりすること、また、今でもわからないが、これが分からなければ、先に進めないので、それから逃げては駄目な事などが分かってくることである。
その分からないが逃げては駄目な、典型的なものが「気」である。これまでは、気は教わった通りに、「宇宙生命力」としてきたが、これだけでは済まなくなってきており、更なる研究が必要になってきたところである。合気道を始めてから半世紀も経って、「気」も知らないのは恥ずかしい限りであるが、過去の事をいまさら言っても仕方がない。修業中に分かればいいだけだ。
「気」は、その概念や働き、そしてその気と技との関係や技への妙用などよく分からない故に、真の合気道、魄を土台にして魂が表になる合気道に入れないのだと考える。
これから「気」への挑戦をするに当たってやらなければならない事があると思う。まず、気の存在、気の働きを信じることである。「気」は存在し、「気」には大きな働きがあることを信じる事である。
次に、開祖の言われていることを信じことである。開祖は、「気」について、『武産合気』『合気神髄』で沢山書かれている。ここに掛かれている開祖の言葉を信じて研究し、稽古に励むことである。
そこで「気」について、開祖がその『武産合気』『合気神髄』で、どのように言われているのかを研究し、そして技の錬磨で試し、身につけていけばいいと考える。
開祖が『武産合気』『合気神髄』に書かれた「気」に関する文章をメモして置いたので、それを私見で分類してまとめてみる。
これによって、「気」とは何か、気の働きや重要性等、「気」の骨子が大ざっぱにつかめるだろうから、これを基にして、更に「気」の研究をしていけばいいと考える。
尚、何年も前からのものなので、出典が『武産合気』なのか『合気神髄』なのかとか、何ページなのか等の控えがないことが残念である。また、今回はコメントを付けたり、私見を挟まないようにし、原文を残すようにした。
気の重要性:ここでは「気」が如何に大事であるか、「気」をつかわなければ合気道の深い修業はできないと言われていると思う。尚、文章の順序に意味はない:
- 「人間は心と肉体と、それを結ぶ気の三つが完全に一致して、しかも宇宙万有の活動と調和しなければならないと悟った」
- 「気は力の本であるから、最初は充分に気を練っていただきたい」
- 「気の妙用は、呼吸を微妙に変化さす生親(いくおや)である。気の妙用によって、身心を統一して、合気道を行じると、呼吸の微妙な変化は、これによって得られ、業が自由自在にでる」
- 「合気は十分気を知らねばならない。武の気はことごとく渦巻きの中に入ったら無限の力が湧いてくる」
- 「一切の力は気より、気は空に結んでありのままに見よ。箱の中に入れるな。気はいながらにしてオノコロ島を一のみに出来る。気の自由を第一に悟れ。気の流れを知りつくせ」
- 「気の修行修練は須佐之男大神とであり、力の大王ともなり、武道の大王ともなるのである (合気神髄p151)
- 「合気道は松、竹、梅の三つの気によって、すべてができています。これは一口にいって生産霊、足産霊、玉留産霊と申し上げます」
- 「合気をするとき気育、知育、徳育、常識の涵養、体育を兼ね備えてなければならない。それはどうすればよいかというと、すべて気である」
気とは何か:
- 「心と肉体を一つにむすぶ気を、宇宙万有の活動と調和させる」
- 「気が昇って身中に火が燃え、霊気が満ちてくる」
- 「気にも剛柔流の働きがある。そして動いている」
- 「東天を拝すると、・・・。気は自分の衣服であると感得する。自然に空気に自分の身が接触して、天地自然の衣服を与えられている理を感じられる」(武産合気 P.96)
- 「火と水の交流によって、気というものができる」(P.109)
- 「気の稽古は至誠の信仰であり祈りであります」
- 「いつも我々は気を通して魂を磨く」
気の種類:「気」には「天の村雲とは、宇宙の気、オノコロ島の気、森羅万象の気を貫いて息吹くことをいう」とあるように、宇宙の気、オノコロ島の気、森羅万象の気等あるが、大事な気は、自己の気、宇宙の気、天地の気のようである:
自己の気:
- 「円に十を書く。その上に左右の足で立ち、左足だけで巡るのである。そして天の気,地の気、要するに天地の気と気結びすることである。 合気では、自己の気と、この宇宙と一体となる」
- 「気の妙用は、呼吸を微妙に変化さす生親(いくおや)である。気の妙用によって、身心を統一して、合気道を行じると、呼吸の微妙な変化は、これによって得られ、業が自由自在にでる」(気の重要性と同じ)
- 「空の気は物である。それがあるから五体は崩れずに保っている。空の気は重い力をもっている。また、本体は物の気で働く。空の気は引力を与える縄。自由はこの重い空の気を解脱せねばならない」
宇宙の気:
- 「宇宙の気はすべて魂の円におさまります」
- 「イザナギ、イザナミ − これが気の大元素の起こりである」
- 「宇宙に充満している。宇宙の万物を生み出す根元。身の軽さ、早業は真空の気をもってせねばならない。真空の気と、空の気を性と技とに結び合いて、練磨し技の上に科学しながら、神変万化の技を生みだすのであります。呼吸し、息吹きして真空の気を吸い、大地の気、森羅万象の気を性と技とにむすびつけて、練磨し技を・・・」
天地の気:
- 「天の気は陰陽にして万有を生み出す。「ウ」は浮にして縦をなし、「ハ」は橋にして横をなし、二つ結んで十字、ウキハシで縦横をなす」
- 「天の気によって天の呼吸と地の呼吸を合わせて技を生み出す」
- 「天の気は日々、地と結んで潮の干満、その玉をいだいて行うのが合気道であり、天の気は陰陽にして万有を生み出す」(「武産合気」)
- 「日月の気と天の呼吸と地の呼吸、潮の干満とこの四つの宝を理解しなければだめなのです」
自己の気と宇宙の気・天の気を調和する:自己の気と宇宙の気・天の気を調和することが大事である:
- 「人間は心と肉体と、それを結ぶ気の三つが完全に一致して、しかも宇宙万有の活動と調和しなければならないと悟った」
- 「弓を気いっぱいに引っ張ると同じに真空の気をいっぱいに五体に吸い込み、清らかにならなければなりません。清らかなれば、真空の気がいちはやく五体の細胞より入って五臓六腑に喰い入り、光と愛と想になって、技と力を生み、光る合気は己の力や技の生み出しではなく、宇宙の結びの生み出しであります」
- 「この使命(武の使命)を達成してこそ、真空の気、空の気の結びつきによって、森羅万象の阿吽の気と連ねることができる」
開祖はもう一つの「気」への道を示して下さっている:
もう一つの気への道:
- 「深山幽谷にたてこもった折りには、一人で陰陽の気が発生して結ぶ」
- 「自分一人でも開眼すれば、宇宙の気はみな悉く自分一人に、自然に吸収されて来るのです。そして悟るべきものはすべて悟るのです」(P.47)
これを土台にして、これから気への挑戦をしていきたいと思っている。
Sasaki Aikido Institute © 2006-
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