合気道には、これで終わりということはない。スポーツや芸能界のように、引退宣言などはない。やるだけやっても、まだまだやるべき事はあるが、ここまでかと思ったら、静かに消えていくしかないのである。
合気道の修行で目指している究極の目標は、宇宙との一体化、己が宇宙になることである、といわれている。己が宇宙になれて、128億年前と遠い先の未来を結び、過去現在未来に自由に出入りでき、顕幽神界にも自由に行き来できて、キリスト様やお釈迦様をはじめ多くの神様たちとも交流できれば、すばらしいことだろう。そうなれば、超人的な力が持てるだろうし、そして、超人的な仕事ができるはずである。
しかし、合気道を修行するにあたり、宇宙と一体化しようと思っても、目標達成は難しいだろう。目標達成、とりわけ最終目標達成のためには、やるべきこととやるべき順序があり、それを一つ一つやりとげていかなければならないのである。
この最終目標を遠い目標として、その目標を達成するためには、その前に達成しなければならない中目標があり、またその中目標を達成するための近目標がある。この遠・中・近目標は、大・中・小目標ともいえるだろう。
では、宇宙との一体化を遠い目標・大の目標として、まず中の目標、つまり何を目標に稽古しなければならないか、を考えてみることにする。
人それぞれに違うだろうが、私はなんといっても、まず一体化する宇宙を知ることが必要であると思う。宇宙を知るということは、科学的に、物理的に知ることでもあるし、宇宙を感じることや、物理的では見えないものを感じることでもある、と考える。
科学的に、あるいは物理的には、宇宙というものが説明されている。歴史や宇宙の構成や状況などなどである。まだまだ分からないことだらけであるが、ある程度のことは知らなければならないだろう。
だが次は、物理的にだけではわからない宇宙を知らなければならない。これは学校では教えてくれないし、教えることもできないだろう。これは合気道を創られた開祖の教えに従った合気道の稽古を通してのみ、身につけることができると考える。
己自身も、万有万物も、ビッグバンで大爆発をする元の一つのポチ(合気道では一元の大神様という)につながっている。従って、万有万物は家族であり、兄弟である、ということになる。これは、何ものも否定できない事実であり、従って、科学である。
また、宇宙には意志があり、万有万物をある方向に導いている。そして万有万物はそのために使命を持ち、生成化育を繰り返している。生れては死に、そして生れる。人や動物の生のために、他の動物や植物が犠牲になるのも、よいモノが創られ、残り、悪いモノや必要のないモノが自然に淘汰されるのも、宇宙の意志、宇宙楽園建設に沿っているか否かによるはずである。
合気道の技の練磨を通して、宇宙を感じなければならない。宇宙も地球も、火と水の十字からでき、人も十字で構成され、十字で機能するように創られている。
そして、十字でできている人間が十字に機能するためには、宇宙の十字の働きと一致することが大事である。そうでなければ、よい働きができないだけでなく、体を害することにもなる。
中の目標にたどりつくためには、小の目標、近の目標、を達成しなければならない。どのような目標があるかというと、次のようなことではないかと考える。まずは、合気道の体をつくることである。要は、宇宙を感じる体と心をつくることともいえよう。そのためには、体を陰陽につかう、体と心を十字につかう、息は生産びでつかう、等などなどがある。
まず小・近の目標を達成し、さらに中の目標、そして大・遠の目標を達成していけばよいのではないかと考える。しかし、大・遠の目標を持たなければ、中の目標も小・近の目標も持てないだろうし、目標のない稽古になってしまうことになる。