【第188回】 理論と実践

合気道は技の鍛錬をして上達していくが、ただ漠然と稽古をしていっても上達出来ない。上達するように稽古をしなければ上達はないのである。上達するためには、いろいろなやり方があるだろうが、今回は「理論と実践」の重要性を考えてみたいと思う。

合気道の技が上手く遣えるようになるには、技を構成している技要因(技ファクター)、または技の技を見つけ、身につけていかなければならない。合気道の稽古は、主に基本技を繰り返し々々稽古していく。はじめは上手く出来なくとも、何度も繰り返すうちに少しでも、今まで出来なかったことが出来るようになる。あるポイントを見つけたのである。それが技要因である。

まずは、その技要因を見つけ、理論化することである。「今までとどこが違ったのか。何故できたのか。」などをおさらいすることである。そして、その理論で他のいろいろな相手と実践してみることである。それが他の人に効けば、その技要因は正しいことになる。例えば、「肘ひしぎ」は相手の腕と自分の腕が完全に交差すれば効くと分かれば、交差が技要因ということになる。そこで例えば、「腰投げ」で試してみればよい。相手を交差するように腰にのせれば上手くいくはずなので、交差は技要因であることが分かる。

次に、見つけた理論を集めて「基本法則」をつくることである。上記に例を2つ(肘ぎめと腰投げ)挙げたが、この交差を他の技(一教、二教、四方投げ等)からも集めて「十字」という「基本法則」をつくるのである。否、つくると言うより見つけるのである。何故なら、「十字」も「基本法則」ももともと宇宙に存在しているものであるからである。そして「十字」という「基本法則」をどんどん他の技でも試し、これを他の技に加えていけば技が、上達することになるわけである。

「基本法則」はすべての技にある技の技であるはずであるから、すべての技で遣えるようにならなければならない。例えば、例で挙げた「十字」がそうである。すべての技は十字で決めるように出来ているようである。

上手というのは、技要因(技の技)を沢山見つけ、身に着け、「基本法則」をみつけ、それをすべての技に活用できるということであろう。

そのためには、実践と理論の両方が必要であるし、それらのバランスが取れていなければならない。ただ体を動かすだけでなく、また、考えるだけ、口先だけの稽古だけでも駄目である。自分のやったことを理論化し、言ったことを実践できるようにしていかなければならないのではないだろうか。