【第164回】 体を分解して鍛える

人間の体は、非常に神秘的に出来ている。人間としての身体機能が、最大限に働くように出来ていると思う。どんなに科学が発達したといっても、創ることができない筋肉や骨が必要最小限使われ、それらが摩訶不思議に組み合わされているのであう。とても人知の及ぶところのものではない。宇宙の知恵が創ったものとしか言いようがないだろう。

手は、七つの可動関節で成り立っていると言える。指に3つ、手首、肘、肩、胸鎖関節である。不思議というか、面白いというか、手首と肘、肘と肩、肩と胸鎖関節はお互いに直角(十字)に動くようになっている。

また、腰は左右に回るが下肢とは十字に働き合う関係にある。大腿と下腿とは膝で直角に折れ、下腿と足も直角である。

体のパーツの構成は十字になっているので、通常の押したり引っぱったりする鍛練では、半分のパーツしか遣われないため、半分しか鍛えられないことになる。従って、意識的に弱い部位や強くしたいパーツの鍛錬をしなければならない。

合気道の技は、各部位が鍛練できるように出来ている。というより、弱い部位やパーツを鍛えるべく基本技がつくられていると思える。例えば、他の部位に比べて弱いが重要である手首を鍛えるのは、二教裏の小手まわしである。肘は三教や肘決め、肩は肩取りや一教〜三教の抑えの受けなどである。ちなみに二教と三教で手首と肘を攻める場合、二教は相手の腕を横にし、縦の十字に技を掛け、三教は相手の腕を縦にし、横に十字に技をかける。

分解して鍛えたならば、今度はそれらを統合し、連動して遣わなければならない。手を鍛えて強いからと、手に頼って技を掛けても効かないものである。体のパーツのオールメンバーが協力し合わなければ、よい技は出来ない。

人は得てして楽にやろうとする。体を一緒くたにしたまま鍛えたり、体の部分で技を掛けがちである。体は分解して鍛え、統合して遣いたいものである。