【第931回】 手掌しゅしょうを鍛える

技を掛けるに際し、手は大事であるが過小評価されているように思う。日常でつかう手をつかえば技が掛かると思っているのであろう。それ故、手は何処か、手とは何かなど知らないし、知ろうともしないようである。そういう自分もそうだったわけだから仕方がない。今だからこんな偉そうなことが言えるのである。
本題に入る前にまず手とは何か、何処かを復習すると、手とは、手先から手首までの手掌、手首から肘までの腕、肘から肩までの上腕、肩から胸鎖関節までの部位である。これはこれまで何度も書いているので詳細は省略する。
武道で上手くつかわなければならない手は一般的にこの手先から胸鎖関節までの長い手と、とりわけこの先端の短い手掌であると考える。本来は一つであるわけだが、手を鍛える、つまりつかう際は意識して別々に鍛えるのがいいということである。例えば、長い手をつかうためには肩が貫けていなければならないが、この肩を貫くのも容易ではなく、肩が貫けるだけでも何年もかかるものである。そんな中、手掌のこと等に集中できないものである。

手掌は尚さらその重要性に気がつきにくい。手の平(手掌)を開こうとしても完全に開けず、指先が真っすぐにならない。それでは力いっぱい掴まれたり、打たれたら耐えられない。
しかし手掌を開こう、拡げようにもどうすれば開き拡げることができるのかが分からない。分からなければ開けないし拡がらない。また後で分かる事だが、手掌が開け広がれば強力な力が出るし、気が生まれるのだが、手掌が開き拡がったからと言ってどうなんだと開き直ってしまうのではないだろうか。

それ故、今回は手掌の鍛え方を研究してみたいと思う。
手掌は主に掌底、小指球、母指球の働きである。武道的には掌底―小指球を手刀、母指球を親指と言ってもいいだろう。
つまり手掌を鍛えるとはこの三点、または二点を鍛えることになる。

まず親指である。正確には掌底―親指である。

次に手刀、そして手掌である。 これを足底とシンクロしてつかえば更に頑強な手掌になるが、これは次回にする。