【第890回】 強力な力を手先から出す

技を掛ける際、技を掛ける手先が相手の強い力で抑えられて動かなくなる事がある。そうするとどうしても抑えられている箇所を力で動かそうとする。力で何とか出来ることもあるので、出来ないのは力不足だろうと思い、腕力をつければいいと考えるようだ。多くの稽古人がそのような状況にあると見ている。何故それが分かるかと云うと、自分自身がそうであったからである。
自分がそうだったからとか、間違っていたとわかるのは、自分が上の次元の段階に移ったということである。上から下は見えるのである。だから、大先生や有川先生は我々の不味いところや間違った事がすべてお通しだったはずである。しかし、下から上は見えないので、我々は大先生や有川先生の技や動き、体づかい等が見えなかったということである。

こちらに力がついてくると、不思議と相手もそれに対応して力を込めて遠慮なく掴んできたり、打ち込んでくるものである。それまでのような体づかいや技づかいでは動けなくなる。それでこの窮地から脱却するにはどうすべきかを考えることになる。いろいろ試行錯誤するわけである。試行錯誤するとは、問題とその解決法を頭で考えたり、シュミュレーションし、道場で試し、反省し、再挑戦を繰り返すことである。問題によっては数日で解決するものもあるが、難解なものは数か月、数年掛かる。
今回の手先(正確には手首)が抑えられて動かなくなるという問題の解決には数か月、否、数年は掛かっているはずである。この問題はずうっと前(数年前、数十年前)からあったはずだが、本当にこれを解決しなければならないと真剣に考えて挑戦したのが数か月前ということである。

お蔭様で、最近、ようやく多少強く手首を抑えられても、手先を自由に動かせるようになった。自由にということは、押さえている相手もこちらの思う通りに導き制するという事である。これまで苦労し、挑戦していた、呼吸法(諸手取呼吸法、片手取り呼吸法、坐技呼吸法)や正面打ち一教もこれで上手く出来るようになったのである。
これとは何かというと、本日の主題である「強力な力を手先から出す」である。

それではどうすれば「強力な力を手先から出す」事が出来るようになるかである。
まず、この強力な力を呼吸力とするのである。呼吸力とは、陰陽の力であり、出る力と引く力である。出しながら引き、引きながら出す力である。
更にこの呼吸力は、常に出ており、引いたり止めては駄目である。
そして、この呼吸力を強弱、遅速、大小に調整してつかえばいい。
これが合気の力であり、①強力②引力③自由自在の力であると感得する。

この呼吸力を手先から出すわけであるが、ポイントは親指と他の指(手刀としてもいい)に働いてもらう事である。

この手先から力を出す感覚は、 で得られやすいだろう。
また、この鍛錬は、 が最適だと考える。

いずれにしても「強力な力を手先から出す」でないと、力負けしたり、体が動かなくなったり、技が掛からなくなってしまう。手先から強力な力が出るように鍛錬しなければならないだろう。