【第848回】 軸から軸へ

合気道で技をつかう際の基本的な法則は陰陽十字であろう。左右の足を左、右、左・・・と前に出し、十字に返しながら歩を進めるわけである。
これはこれまで書いてきたし、やってきたことであるが、これだけでは十分ではないことが分かってきた。それは足を左右陰陽につかうを体軸に代えてつかうことである。つまり、体軸を左、右、左・・・と陰陽につかうということである。従って、これまでの足は体軸の一部となるわけである。

体軸は一軸である。一本の軸であり、足と同じように軸が左、右、左・・・と陰陽に動くのである。軸から軸への移動で技をつかうのである。
この軸は天と地を結んでできるものである。アーとオーの言霊でできる軸である。軸であるから体は一本の棒のように真っすぐでなければならない。しかし、実際の体は股関節から左右の足が出ており、地には三つの重心が働き、所謂、三軸である。この三軸を一軸にしなければならないのである。
もう一つの問題は、この一軸を十字に返してつかうことである。

三軸から一軸になるのも、一軸を十字に返すのも腹である。腹で体を一軸にし、そして十字に返すのである。
一軸にするには腹を足(下肢)の真上にのるように移動するのである。腹の面と足先方向とが十字になる。また、この軸を十字に返すのも腹である。腹を十字に返し、その結果、その軸は陽の前足先と同じ方向を向くようにするのである。尚、腹が移動して一軸になるためには腹が柔軟でなければ十分移動できないし、また、上手く十字にもならない。腹を十分に練らなければならないということである。大先生が、腹を練れと言われている意味が分かってくる。一軸にならず、軸が返らない理由は腹が十分に柔軟でないことのようだ。
更に、この腹を十字に返すのは足先である。体重がのった足先の母指球を支点に腹で体をかえすのである。また、足先・母指球は軸の動きをロックしたり、ロックを解除する働きをする。足先(母指球、爪先)の重要さがあらためて分かるだろう。

しっかりした軸をつくり、つかうのは大事であるが、このためには息に上手く働いてもらわなければならない。特に、足(下肢)の息づかいは大事である。足の息づかい・足の呼吸は、体(重さ、力)が地に下りる時・下ろす時は息を吐き、地から上に上がる時・上げる時は息を引いているのである。これは通常の歩行で無意識のうちにやっている息づかいである。足を踏み下ろす時は息が腹から足下に下り、足の筋肉が締まる。そして踏み下ろした足が上がる際は、息が入り、足の筋肉が緩む。これが自動的に行われている。これに逆らわないよう、邪魔しないような息づかいをしなければならない。この感覚は一軸になって体をつかわないと分かりづらい。

一軸の感覚をもったり、一軸になるのは難しいので稽古で意識してやらなければならないと思うが、合気道の稽古以外でも得られるはずである。例えば、四股踏みである。また、日常での歩行(勿論、ナンバ歩き)でも階段でも身につけることができる。