【第827回】 肩に更に働いてもらう

これまでいい技を生むために、肩も上手くつかわなければならないし、そのためには肩を鍛えなければならないと書いてきた。例えば、肩も左右陰陽、縦横十字につかわなければならないし、鍛えなければならない等である。このように肩を鍛えていくと、肩はカスが取れ、柔軟になり、腰腹の力が手先まで通るようになる。そして手先もしっかりし、手が名刀のように働くようになる。また、手先に己の体重が懸かるようにもなり、大きな力が相手との接点に掛かることになる。

そうなると手先から更に力(気)を出そうと、手先に力(気)を集中し、そして手先を操作することになる。片手取・諸手取呼吸法でも手先に力(気)を込めて、相手とくっつき、相手を導こうとするようになる。それまでと異質で、強大な力がでるので、相手を導けるようになる。
また、剣を素振りするにも鍛錬棒を振るにも、肩を貫き、十字で振り、手先を鍛えるように振ることになる。

ところが、技も格段と効くようにあるし、剣も鍛錬棒も気分よく振れるようになり、満足していたところ、肩周辺に激痛が走るようになったのである。朝起きる際、布団をまくり上げようとしても、痛くて上がらないのである。布団が重いわけではない。一応、羽根布団ということなので、ふわふわ軽く、幼児でも持ち上がるはずである。
この激痛が数日続くので、これは自然には治りそうがないようなので、何とかしなければならないと思った。勿論、心配はしないどころか、また試練がきたかと張り切った。これまでも似たような事はあったし、それらを解決して、それを身につけてきたからである。例えば、最初の肩の痛みは、肩を縦横十字につかうことによって解決したし、お陰で手が長く使え、手先に力が集中するようになった。

この問題解決の為に、その原因、そして改善法を考えてみた。
まず、肩周辺の激痛の原因は、肩に負担が掛かりすぎたことであった。手先に力(気)を集中して、手先から手をつかったことにより肩に負担が掛かったのである。故に、肩に負担が掛からないようにすればいいということになる。
次に、この肩の激痛の問題解決法である。二つある。
一つは、肩(肩周辺)を更に強固に鍛え、固めることである。肩が十分にしっかりしていなければ、肩に負担が掛かり、痛めるはずであるからである。
これまで、肩を十字につかって、肩を柔軟にしてきたが、この時点で肩はまだ十分に固まっていないということである。
肩をかためるためには、布斗麻邇御霊とアオウエイの息と体づかいで肩に力と気を満たして、技をつかい、体を動かして錬磨すればいい。これで片手取呼吸法、諸手取呼吸法、一教等で肩を固めていくのである。また、剣を振ってもこれで肩を固めることができる。この肩の固まりの中には、最前の十字に働く柔軟な肩が控えているわけだから、只の固さではなく、柔軟で強固な固さということになる。尚、肩が固まるとは、肩が張ると云ってもいいだろう。肩周りに筋肉がつくのである。

問題解決の二つ目である。それは肩のつかい方ということになる。
これまでは手を出す際、手先から出していたわけだが、今度は肩から手先へ力(気)をつかうのである。先に出した手先の力よりも、肩から出た手先の力の方が強力なのである。肩に負担が掛からないので、激痛も走らなくなるのである。
以前から、素晴らしい姿形の写真だとは思っていたが、何故、素晴らしいのかが分からなかった。次の、有川定輝先生の一教の写真である。

肩から力が出ており、肩に負担が掛からず、手先、そして相手に強力な力が働いていることがよく分かる写真である。非常に、宇宙の法則の理に叶った、自然で、しかも武道的に納得がいく写真である。以前は無意識で何となくそう感じていて、素晴らしいと思っていたのだろう。

肩に更に働いてもらう必要があるようだ。肩に働いてもらえば、有川先生の技に少し近づくことができるだろうし、また、新たな発見があるだろう。